【日経平均株価の振り返り】
値動きを狭められていた日経平均が、上でも下にでもレンジを抜け出したがっている中で、半島情勢を理由に下げたと云われています。真に半島情勢が原因であれば、北朝鮮問題が落ち着けば、株価は元の水準まで戻すはずです。一方、下げたがっている市場が、北朝鮮問題を大義にしただけであれば、今後も悪材料を探して下落トレンドを続けることになりそうです。この見定めが重要となります。(有料メルマガで、詳細を解説しています。)
このところ20,000円を挟んで揉み合いが続いていた日経平均ですが、8月は防衛ラインを下げる恰好となりました。
8月3日の内閣改造に対する市場の反応は、失望も期待もなし。一方で、4月~6月のGDPは年率4%増と6期連続のプラス、上場企業のEPS(1株利益)も堅調に伸び、日本企業の稼ぐ力(EPS)は引き続き健在です。さらに、公的資金の買い支えがある訳ですから、上値を探る展開がみられても不思議ではありませんでした。国外の政治リスクや地政学リスクが、日経平均の上値を重くしていたのが先月の初旬です。
その後、国内外の投資家が夏休みを迎え板が薄い中で、北朝鮮がグアム周辺へのミサイル攻撃に言及し、それに反発したトランプ大統領の発言が加わり、市場に緊張が高まりました。11日のシカゴ先物市場では一時、19,300円をつけ10日の引け後も下げが続く展開となりました。
20,000円を挟み200円ほどの値動きと、極めて狭いレンジで動いていた日経平均は、上でも下でもレンジを抜ける理由を探していたと言えます。株価は上昇するときはゆっくりですが、一旦下げ始めると利食いしようとする投資家が多ければ多いほど、下げのエネルギーは高まり、一瞬のうちに転げ落ちます。
現在、日経平均が下げている理由の一つが半島情勢といわれています。今年5月に北朝鮮危機が高まった際は、その後20 ,300円近くまで上昇しました。それは半島情勢が中休みとなり、米国を中心に相場が高騰したことなどが原因ですから、今回とは状況が違います。北朝鮮で万一があり得ますし、米国市場も調整ムードが漂っています。これまでであれば、PER14倍(日経平均19,600円程度)を下回っているから買いといった考えは、半島情勢で衝突を回避される見通しと、安倍政権がしばらく存続する見通しがあってこその話でしたが、状況は急激に変化しています。
【北朝鮮問題】
今回の北朝鮮問題では、5月16日のトランプ大統領ロシア疑惑(市場リスク=7.14%)と同じレベルの7.16%まで市場リスクが上昇しました。8月の北朝鮮問題は米中の「100日猶予」が過ぎ、これまでと違った次元に移行しました。金氏とトランプ氏の口撃は、まさにこの一環でした。つまり、従来のように中国を介して圧力をかけるのではなく、米国と北朝鮮が直接駆け引きを始めたため、トップ同士が口撃し合うこととなったといえます。8月9日、奇しくも長崎原爆忌です。北朝鮮にそこまでの計算が合ったかどうかは判りませんが、少なくとも「すわ軍事衝突か」という不安を煽ることとなりました。互いの口撃以降も、北朝鮮は日本上空にミサイルを飛ばしてみたり、核実験をしてみたりと、挑発を繰り返しています。
可能性は高くないと思いますが、北朝鮮が無謀な挑発を続ける結果として、米朝間で戦争が勃発するシナリオは確かにあります。万一そうなれば、日本の米軍基地などは標的となるかもしれません。
中国の緩衝材がなくなってから、米朝両国間の直接的な駆け引きにおいて、北朝鮮側は多くのものを得つつあります。北朝鮮を核保有国として認める動きが少しずつ着実に広がってきており、核を保有した上での体制保障も、ないわけではないところまでこぎつけています。アメリカとしては、北朝鮮がアメリカへの直接的な核攻撃はしないことを約束し、核の拡散を防ぐ側に回るのであれば、さほど困らないという事情があります。今後、北朝鮮がアメリカとの交渉の席につき、理性的に対話する姿勢を示すことがあれば、アメリカは中国や韓国、日本などを飛び越えて、北朝鮮と手打ちしてしまう可能性もあります。アメリカ大陸に届くICBMは放棄しても、日本に届く中距離弾道ミサイルは好き勝手に使えます。そんな国の核保有が認められれば、日本にとって開戦よりも厄介な話です。
今なお、アメリカは交渉を続ける姿勢を保っており、金正恩氏が理性的な人物であれば、表向きは強気の姿勢を示したとしても、どこかで手打ちの可能性を探るはずです。ただ若い金正恩氏が置かれている今の状況で、冷静で合理的になれと言うのは無理かもしれません。金正恩氏は自分と家族(それと国民)の運命について、全てを一人で決断しなければならない立場です。それほど強いストレスがかかる環境において、理性的かつ合理的でいられる人は極めて少数でしょう。こうした状況下では、客観的な事実や分析、助言よりも、恐怖と錯誤が頭の中を支配しているはずです。金正恩氏には、隙を見せればやられるという恐怖が常につきまとっているでしょう。アメリカが核保有も体制も認めると言ったとしても、何か罠があるのではと疑心暗鬼になるはずです。
歴史をみれば、指導者や司令官と言われる人々が、頭の中にある恐怖や錯誤で間違った判断をしないように、参謀という制度が考案されました。しかし、金正恩氏には頼りになる参謀も、紛争解決を依頼する交渉人や代理人もいません。金正恩氏が恐怖や錯誤から免れ、冷静で合理的な判断ができる可能性は低いと考えた方が良いかもしれません。恐怖にかられ、錯誤の中で自殺的な行動をすることは、万が一にもあり得るということです。
北朝鮮側は体制を存続したいわけですし、アメリカ、韓国、日本も戦争など望んでいません。しかし、誰も望まないことが時に起きてしまうことを歴史は証明しています。
【次のショックはどこから?】
2008年9月のリーマンショック直前も然り、大きなショックの前の市場は楽観的です。今となって振り返れば、BNPパリバ系のヘッジファンドが破綻した辺りから、リーマンショックの予兆がありました。次のショックが起こるとすれば、何が引き金になるのでしょうか。大きなショックの引き金となりかねない事象を確認しておきます。
<FRB資産圧縮で米ローン延滞率急増>
アメリカの自動車ローンは低所得者層にも広がっていて、リーマンショックの時のサブプライムローンを想起させます。
FRB(米連邦準備理事会)の資産圧縮が開始によって、米長期金利や超長期の金利が想定以上に上がることがあれば、自動車ローンの延滞率は上がり、信用度の低いジャンク債の価格が急落し、警戒感が金融市場に芽生えることで、リーマンショックの再来かという不安が広がり出す可能性があります。トランプ政権の政治リスクと合わされば、想像以上のショックになり得ます。
<ECBの出口戦略と金融システム危機>
最近、EU域内で複数の銀行が経営危機に陥りましたが、なんとか沈静化してきました。
足元では、イタリアやスペインの国債利回りが低下し、どこにも金融危機の芽はないようにみえます。モンテパスキは、EUの合意を取り付けて救済しましたが、ベネト・バンカとバンカ・ポポラーレ・ディ・ビチェンツァに公的資金を注入した際は、EUの破綻処理ルールに従わずイタリア政府主導でした。これらをみても、ECB(欧州中央銀行)の超緩和政策によって金融システムの弱さが隠されてきたように推測されます。
ECBが緩和政策から出口戦略に動き出せば、再び危ない銀行の経営危機が表面化し、連鎖的に金融システムへの懸念が高まる不安があります。
<アジアのドル建て債務>
アジア太平洋地域の新興国が抱えるドル建て債務は、約1.1兆ドルに達します。
FRBの利上げによってドル高となれば、そうした国々はドル建て債務の返済力が低下し、信用不安へと広がるリスクも考えられます。また、FRBの資産圧縮によってドルの流動性が引き締まることも懸念材料です。
中でも中国は、地方政府や国有企業の債務問題に関し、実態を明らかにしていません。中国の銀行でドルの資金繰り懸念が出てくるようであれば、明らかにされていない分憶測が加わって暴発する可能性もあります。
<湾岸諸国が保有資産を大量売却>
サウジアラビアなどのスンニ派諸国と、カタールが国交を断絶しています。さらに緊張が高まれば、ペルシャ湾岸諸国の通貨安圧力が強まりかねません。そうなると、通貨防衛策として保有するドル資産を売却すると思われます。
湾岸諸国は約2400億ドルの米国債を保有しており、米国債売却への思惑が出れば、米長期金利が乱高下することもあり得ます。米国債以外にも、金融資産や不動産を世界中に保有しており、それら資産の売却が大規模に行われるようなことになれば、どこかの市場で価格が急落し、ショックが波及する可能性も考えられます。
【補正予算は?】
3日の内閣改造では、反安倍派と目されていた人々を要職につけることに成功しました。総理派閥の細田派(清和会)と、他派閥の総理と親しい人を除けば、有力な人々はたいてい反安倍派か、事情があって政権から一歩引いた人々です。今回の内閣改造では、何より総理自らが仕事人内閣と言うとおり、彼らの能力を活かすことが現時点では最良の選択です。それが政権維持にも繋がる訳ですし、反安倍派の動きを和らげる効果もあるように思います。
もう一つ、将来的に岸田内閣へという路線が示されたことも大きいように思います。岸田氏の外相留任は規定路線とされましたが、閣外に出て政調会長の職に就きました。今後は、政調会長の立場を活かし、将来の岸田政権構想をまとめつつメディアで意見を言う機会が増えることでしょう。安倍総理が、その力を蓄える機会を岸田氏に与えたことは、事実上の後継者指名と理解しても良いでしょう。安倍政権の延命と岸田政権への継承を繋いだ人事といえますから、政策の継続性の点からも、うまく考え抜かれた妙策であったように思います。
例年どおり開かれる臨時国会では、補正予算については具体的な話がまとまっていないようです。消費減税という驚くような話も、解散総選挙の話がトーンダウンするにつれ、聞こえてこなくなりました。
確かに減税すれば景気は急回復して、インフレ率2%も達成できるかもしれません。何よりも株価を押し上げる原動力となります。また、それだけでアベノミクスは成功を宣言することができ、支持率も急上昇する可能性もあったわけです。しかし、森友学園の問題で財務省に大きな借りを作った安倍総理と財務省の関係を考えれば、総理側がこれを押し通すことは極めて難しかったはずです。
安倍政権から岸田政権への継承(途中、一時的に麻生氏もあり得ますが)を前提に考えれば、
・異次元緩和の継続(黒田路線の維持)
・財政再建路線の維持(消費再増税の断行)
・一億総活躍社会(老若男女ワークシェアリング)
という従来路線に乗っけるかたちで、小さな一手が散発的に出てくると考えるのが現実的でしょう。




