「マイホームを購入しても、月々の住宅ローンの返済は、現在の家賃と同じくらいなので充分返済していけますよ。」
こんな話を耳にしたことはありませんか?
たとえ、現在の家賃と同程度の返済であったとしても、マイホームを購入する際には、諸費用がかかります。また、多くのご家庭の場合、頭金を購入費用の一部に充てられます。更に購入した後には、不動産取得税や固定資産税、修繕費用、リフォーム費用なども必要になります。
これらの費用を合計すると、住宅ローンの返済とは別に、1000万円を超えるようなお金がかかるのが一般的です。これほどの大金は、お子さまの進学やご夫婦の老後に大きな影響を与えることになりますから、生涯で家にかけても良い金額を把握することが大切です。
では、実際にどのくらいの物件なら購入しても大丈夫なのでしょうか。
「現在の家賃」と「月々の住宅ローンの返済額」を比較するだけではなく、頭金や住宅ローンの返済総額、税金やその他の費用も合わせて考えることが必要です。
また、「銀行が貸してくれる金額」が、必ずしも「返済できる金額」とは限りません。「返済できる借入金額」を知ることが、確実に住宅ローンを完済するための第一歩です。
安心して返済できる借入金額は
年収×(0.2~0.4)※1 ×返済可能な年数×(0.67~0.85)※2
※1:年収、家族構成などによって変動 ※2:金利の掛け戻し
■相談事例(住宅購入)
現在建設中のマンションで、物件価格3680万円を購入しようかどうかを検討しているご家族でした。
ご主人の年収は720万円
奥さまは、長男が小学校に入学したら、パートで勤務する予定
お子さま2人は、出来れば中学から私立に進学を希望
購入にあたっての諸費用は、265万円
銀行からは 4500万円までならローンが組めると言われたけれど、本当に大丈夫か不安が拭えず、相談に来られました。
●改善結果(住宅購入)
返済期間を短くして、トータルの利息を軽減することを試みました。しかし、月々の返済額が増えるため、お子さま2人を私立中学へ進学させると、早い時期に貯蓄が底をつくことになります。
また、在職中に繰り上げ返済をしても、お子さまの学費が増える時期に貯蓄が底をつくことがわかりました。
物件価格を300万円下げて、現在予定している住宅ローンとは異なるローンで試算を行うと、貯蓄が400万円を下回る時期がなくなります。
お子さまの進学にかかるお金を考えると、購入を検討していた物件の価格が高額だったといえる事例です。
物件価格を300万円下げることで、住宅ローンの返済総額は約426万円少なくなります。(30年返済、固定金利2.5%での数値)
また、 登録免許税や事務手数料、団体信用生命保険の保険料も、住宅ローンの借入れ金額に応じて少なくなる場合がありますので、物件価格の多寡は家計に大きな影響を与えることになります。
いろいろな物件を見ていると、楽しくてついつい目移りしてしまいます。中でも、高い物件には高いなりの良さがありますから、一度そのような物件を見てしまうと、どうしても気になるものです。予算がオーバーしていても、「あと100万円ぐらいなら、高くても大丈夫。」などと、強気になりがちです。
この「相談事例」のように、購入する物件価格次第では、子どもの学費が足りなくなったり、老後の生活が成り立たないことがあります。ご家庭にとって物件価格が高額であった場合、借り換えや繰り上げ返済を駆使しても、家計が破たんしてしまうことになりかねません。近年、住宅ローンの返済が厳しいことを理由に、毎月何千人もの人が金融機関へ相談に訪れています。(金融庁ホームページより)
「マイホーム」は、私の家という意味ですが、住宅ローンを最後まで完済できて、ようやく本当の「マイホーム」です。せっかく購入したマイホームを、もしも途中で手放すようなことになっては、家計だけでなく精神的にも大きなダメージになります。
安心して購入できる物件価格を知り、ご家族の願いである「マイホーム」を実現して欲しいと思います。
■相談事例(繰上げ返済)
現時点で月々の返済は厳しくないけれど、今のうちにできるだけ返済をしておきたい、と相談にみえられました。
借入当時に比べて金利は下がっていますが、現在の住宅ローンが変動金利であること、近年ご主人のボーナスが少しずつ下がっていることが、気になるご様子でした。
今ある預貯金のうち300万円は、余裕資金として使えることもお聞きしました。
変動金利は、5年ごとに、その時の金利によって、月々の返済額が再計算されます。
5年間毎月の返済額は変わらなくても、半年ごとにその時々の金利が適応されて、元金の返済と利息の返済の割合が変動していることをご説明しました。
●改善結果(繰上げ返済)
借り入れ当初よりも金利が下がっていれば、借り換えをしなくても、金利が下がった恩恵を受けていることになります。また、現在は毎月の返済に問題がないため、諸費用が必要な借り換えではなく、繰り上げ返済を検討しました。
繰り上げ返済には、「返済額軽減型」と「期間短縮型」があります。「返済額軽減型」に比べて、「期間短縮型」の方が利息の軽減効果は大きくなります。
また、月々の返済額を抑えたい場合には、「返済額軽減型」が使われます。
(下表の数値は、300万円を使って、もとの住宅ローンを繰り上げ返済した場合)
ご相談者の場合は、将来金利が上がった時や、年収が下がった時の返済を心配をされています。今のうちに、できるだけ元金を減らすことができる「期間短縮型」で、将来の金利上昇や返済負担のリスクを小さくしました。
また、繰り上げ返済による、保証料の一部返還も受けることができました。
■相談事例(借り換え)
これまでの住宅ローンは全期間固定金利でした。
月々の返済には困っておられませんが、借り入れ当初よりも住宅ローンの金利が下がっていること、返済期間が残り23年あることから、今よりも良い条件で借り換えが可能と考え、相談に来られました。
残る住宅ローンの額は、2280万円。
毎月の返済額は軽減できなくても構わないので、返済総額を少なくすることを目的とした借り換えのご相談です。また、借り換え後も、全期間固定金利がご希望でした。
●改善結果(借り換え)
返済総額を少なく抑えるためには、金利の比較だけではなく、事務手数料や保証料なども含めた検討が必要です。
これまでの毎月返済額の範囲で、返済期間の短縮を検討しました。
月々の返済額は殆ど変らずに、返済期間を3年短くして、今よりも安い金利の住宅ローンに借り換えることが出来ました。繰り上げ返済の期間短縮型と同じく、返済期間は利息の総額に大きな影響があります。
銀行との交渉で保証料が不要になったこともあり、約65万円の諸費用を差し引いても、約390万円の利息を軽減することができました。(下表の条件で借り換えをした結果です)