『以下は、6月3日配信の有料メルマガから一部抜粋。
この週の日経平均株価は、前週の終値20,601円から20,884円へ』
今後は国内政治を主役としたステージに移ってくることになると思われます。
安倍政権の玉として、消費税増税延期・中止が残っています。日経平均が20,000円を割ると、いつ、この発表が飛び込んでくるかもしれません。
また、消費増税中止・延期の代案として、消費増税は強行するが、公共事業などの追加経済対策をさらに上乗せするということも考えられます。こうした政策により株価が反転することになったとしても、一時的な反応で終わり、中長期のトレンドを反転させる力はないと考えますが、すべては出てくる内容を確認して見なければ、現時点での決めつけは避けた方が良いでしょう。
『以下は、6月10日配信の有料メルマガから一部抜粋。
この週の日経平均株価は、前週の終値20,884円から21,116円へ』
安倍総理が模索する消費増税延期(中止)という、日経平均上昇の特効薬となる大玉の発動も、与党内と霞が関からの強烈な巻き返しで、徐々にその可能性が低くなってきており、国内の新たな上昇圧力も望み薄になりつつあります。
この株価位置を大きく超えて上昇するには、やはり、いま一つ上昇圧力に欠けるものがあります。アメリカ株の上昇によって、日経平均にも連れ高圧力はかかりますが、アメリカ株の上昇が利下げを主因とする限り、せっかくの連れ高圧力の一部また全部を、円高が相殺する恐れが大きいと思われます。日経平均は本来ならあり得ない水準まで、下がってしまっているところですが、さりとてここから力強く上昇して、V字回復軌道を描くだけの材料は、現時点ではまだあまり見当たらないといえます。
『以下は、6月17日配信の有料メルマガから一部抜粋。
この週の日経平均株価は、前週の終値21,116円から21,258円へ』
問題は実際にFRBが利下げを断行した場合、本当に日銀に対抗策があるかどうかという点です。日銀が追加緩和を示唆するといって、実際に何をやることができるのかという点は、現時点でまだ謎のままです。実際、アメリカの利下げに対応して、日本もまた利下げを実施するならば、「マイナス金利の深掘り」しかなくなります。
確かに円高は止まるかもしれませんが、その副作用は深刻極まりないものがあり、金融機関の多くが凍り付いてしまいます。地銀や生命保険会社の中には、経営破綻も危惧されるところもあるため、下手をすれば日本発の金融危機になりかねません。
したがって、追加緩和をやるとすれば、やはり市中から国債を買い込んで、マネーを市場に供給するというオーソドックス(?)な量的緩和が、その柱になると思われます。(量的緩和という手段は今なお批判や懸念が根強いものですが、残念ながら日銀が行える有効な金融政策はこれしかなくなってきています。)
今年3月に発表の新たな購入計画では、買い入れの実施回数の減少が書き込まれ、購入額の大幅な減少が示唆されましたが、「ステルス・テーパリングの継続・拡大」と市場関係者の多くも認識したにもかかわらず、長期金利を低水準で維持できています。この黒田総裁らの孤独な戦いによって、昨年の買い入れ額が40兆円を切った結果、異次元緩和を続行する余力は、ある程度残っています。
アメリカの利下げによる円高圧力に対抗し、半年から数年ほど異次元緩和を拡大させ、円高の速度を和らげるということは、もしかしたら可能になるのかもしれません。ただ、買い入れ額が減少したとはいえ、すでに買った分を吐き出したわけではなく、全国債における日銀の保有比率はすでに40%を超えた水準で推移しています。黒田総裁は「理論上、上限はない」「100%の買い切りも可能」と言いますが、それをやっていいかどうかは別問題です。
量的緩和にも副作用があります。そもそも国債は重要な金融商品ですから、市中から全部を巻き上げてしまったら、あらゆる金融システムが円滑さを欠き、日本経済が機能不全に陥ることが懸念されます。(既に国債市場は息をしていません。株式市場も、日銀の買いで浮動株が減少し続け、売買代金も減少しています。)
また、全国債の5~6割を中銀が保有すれば、「財政ファイナンスだ」との疑念から、日本国債と円の信認が暴落して、市場が売りに走るという指摘が、かねてから根強くなされています。さらには別の観点からの指摘として、アメリカが黙認してきた従来の水準を超えて、日銀がさらなる国債買い入れを断行すれば、トランプ政権はその円安効果に目をつけ、日本を為替操作国と批判し始めることも十分にあり得ます。日米協議に為替条項が組み込まれ、政治圧力による円高が発生したならば、それで異次元緩和の効果が相殺され、逆に円高が進む懸念すらあるわけです。
『以下は、6月24日配信の有料メルマガから一部抜粋。
この週の日経平均株価は、前週の終値21,258円から21,275円へ』
リーマンショック後の「量的緩和バブル」が、再び始まるのではないかという期待で、アメリカ株が上昇しています。
FRBは金利を「据え置き」とし、具体的に動いたわけではありませんでしたが、パウエル議長が「年内の利下げ」を示唆したことで、世界市場は「利下げ」を前提として動き出しました。欧州ではECBのドラギ総裁も景気減速に対抗し、こちらも金融緩和を示唆したことが歓迎され、世界的に市場全体が金融緩和を前提として、リスク・オフのムードがある程度後退しました。
日銀もこの金融緩和の流れを無視できなくなっており、(アメリカが利下げ、EUが金融緩和すれば、円高と株安圧力がかかるため)明確に追加緩和を示唆するに至っています。多くの騒動の震源地であるアメリカでは、貿易戦争と金融政策の双方の緩和を歓迎し、あっさりと史上最高値を更新しています。先述のとおり、先週中盤以降、日経平均がするりと上昇したのは、このアメリカ株の上昇に連れ高した側面が濃いです。(日銀が日本の株式市場を機能停止に追い込んだことで、現在の日経平均、日本市場は主体的に動けるエネルギーがありません。)
しかしながら、世界市場が再び金融緩和頼みとなったのは、日経平均にとって痛し痒しであり、その焦点はもちろん為替です。まだアメリカは利下げしてもいないのに、すでに円高の圧力が発生しており、1ドル107円割れ寸前まで一気に動きました。
1ドル110円を大きく超える円高は、日経平均の上昇圧力を完全に削いでしまうものです。実際、日経平均は再び21,000円を目指して押し戻されてしまっています。
投稿日:2019年6月20日
ゼロ金利の日本円では、貯蓄型生命保険の商品設計ができません。そのため近年は、金利のある米ドル建ての生命保険が、資産形成の目的で販売されています。
はたして、外貨建て保険を使った資産形成は効果的なのでしょうか。
3つの観点から考察してみます。
1、「成長率が高い国の通貨は高くなる」は本当?
2、「日本は財政難だから基軸通貨のドルを持つべき」は本当?
3、為替平価とは?
1、ドル建て保険のセールスでは「成長率が高い国の通貨は高くなる」が常套句になっています。
今から約20年前の1998年は、ドル円は1ドル=140円程度でした。その後、日本の経済成長率はアメリカを下回り続けています。「高成長の国の通貨は高くなる」というセールストークが正しければ、円安ドル高になっているはずです。
実際は、経済成長率が高かったアメリカのドルが上昇したわけではなく、最近では1ドル=110円程度(この投稿をしている時点では108円台)と円高ドル安が進んでいます。この間、ドルに対して円が約20%高くなった計算になります。
更に詳しく見ると、民主党政権下で経済が低迷した2012年頃まで円高が加速し、アベノミクス始動で経済がやや上向いた2013年以降、逆に円安に戻っています。
「経済成長=通貨高」という説明には、かなり無理があることが判ります。
2、「日本の財政は悪化を続けているので、基軸通貨のドルを持っておくべき。」といったセールストークも多いようですが、基軸通貨のドルは、果たして安全と言えるのでしょうか。
円も将来どうなるか判りませんが、ドルだから信用できるということではありません。もちろん、ユーロも同じです。
一般に知られているアメリカの政府債務は2000兆円くらいですが、地方債務などを合わせると、国家が抱える債務額は4000兆円とも5000兆円とも言われています。(詳細は闇の中)。しかも、日本と同様に、その額は年々増加しています。
続いて、経常収支は2018年で500兆円の赤字。
さらに、対外純資産に関してはマイナス。約900兆円の純負債を抱えています。因みに日本の対外純資産は300兆円以上。
つまり、国家が借金まみれなのは日本だけではなく、アメリカも同様であり、しかも経常収支も大赤字。いわゆる「双子の赤字」です。
アメリカは、国外から絶えず新しい投資資金が流入してこなければ、すぐに資金繰りが厳しくなってしまう状況なです。
「双子の赤字」と聞いて「プラザ合意」を想起する方も多いと思いますが、実際、多くの識者が「最後はトランプ大統領が、第2のプラザ合意的なドル安政策を強行して、対外債務の一部を実質的に帳消しにするのではないか」と指摘しています。
財政状態が厳しいのは日本だけではなく、アメリカも同じです。見ようによってはアメリカの方が厳しい状況かもしれません。
よって、通貨分散は意味がないわけではありませんが、主要通貨が手をつないで価値暴落する可能性を想定しておくべきだと考えます。それは、「ドル安、円安、ユーロ安」つまり「主要国揃って貨幣価値の下落(インフレ)」ということです。
3、為替平価とは、高金利の外貨は為替レートが通貨安になることで、長期的には外貨で得られる金利を為替が相殺する、という理論です。
この「為替平価」に当てはめれば、外貨建ての生命保険は、円高によって利回りが相殺されることになり、高いコストによって実際の利回りはマイナスになってしまいます。
このように、為替は保険セールスの現場で語られているほど単純ではありません。
日本の円と比べればドルは高金利に見えますが、長い時間軸で見れば米ドルの金利も歴史的な低水準です。
生命保険を資産形成に利用するということは、こうした低い金利で長期間拘束されることになります。為替変動は、ドルで得られる2%程度の金利※を得るためのリスクとして、見合うものではありません。(期待収益<為替リスク)
※予定利率が3%なら、コストを差し引いた実質的な利回りはドルベースで2%程度
投稿日:2019年6月10日
『以下は、5月6日配信の有料メルマガから一部抜粋。
この週の日経平均株価は、前週の終値22,258円から21,344円へ』
消費増税延期(中止)という改元早々に出そうな大策について、かなりの期待が芽生え、株価にも織り込まれてきていると思われます。実際、統一地方選の結果を受けて、かなり解散風が強まってきています。
さらに日銀の黒田総裁も大きく方針を転換し、異次元緩和を2020年の春以降も継続する方針であると明言しました。昨年秋からの米中対決の激化や、英欧関係をはじめとする欧州情勢の大混乱、また日本を含む主要国の景気サイクルなどで、出口戦略の条件は全く整っわず、逆に昨年末から今年初にかけての暴落劇で、日本を含む世界経済全体が動揺しかけたこともあり、日銀は「必要あれば追加緩和」と何度も明言して、出口と逆の方向性も示唆してきました。今回、ついに「無期限の異次元緩和」という、異例のフォワードガイダンスを行うことで、出口戦略の模索を事実上放棄したことは、株式市場にとって大きなインパクトがあります。
ただし、これまでの状況を冷静に考えてみれば、日本政府と日銀の両者が全く同時に、増税延期(停止)や無期限の異次元緩和という、政策転換に言及せざるを得ないほど、日本経済が危機の瀬戸際にあることも事実です。
実際、不安の種はいくつもあり、その一つは日米間の為替条項です。訪米中の麻生財務相との会談で、ムニューチン財務長官が日本に対して、為替条項を求めると表明したため、これを受けて株も為替も少し動揺しました。以前から繰り返しお伝えしているとおり、日米間で為替条項が導入されれば、日銀の異次元緩和が批判の的となり、機動的な金融政策が制限されるのは必至です。
異次元緩和にアメリカから「待った」がかかれば、アベノミクスはその時点で強制終了となり、日経平均は大きく巻き戻すと思われます。
『以下は、5月13日配信の有料メルマガから一部抜粋。
この週の日経平均株価は、前週の終値21,344円から21,250円へ』
アベノミクスが始動してからのドル円相場の動きは、「円売りポジションが8~12万枚程度まで積みあがると、巻き戻しの円買い・ドル売りが始まり、ドル円相場が反転する。」という傾向が続いています。今回もこの見方が生きているようであれば、4月末に10万枚近くまで積みあがった円売り建玉の巻き戻しが始まっているのかもしれません。アベノミクス当初ほどの連動性はなくなっているものの(当初は完全連動だった。)、海外投資家の「円売り・日本株買い」のセット売買とその解消の影響で、投機筋建玉の飽和からの為替市場の反転と、株式市場の動きの連動性は現在も維持されています。つまり、年初からの株式市場の戻りも、そろそろ反転の時期に来ているのかもしれません。
『以下は、5月20日配信の有料メルマガから一部抜粋。
この週の日経平均株価は、前週の終値21,250円から21,117円へ』
GW明けから6日連続で下げた日経平均は、米中対立膠着の間隙をぬって戻りに転じたように思われます。しかし、17日(金)前場終了後の昼休みに、中国の国営メディアが、「現在のような関税引き上げの脅しの下で、米協議再開に関心がない。」と報じたことが伝わり、その日の高値から150円ほど引き戻されて先週を終えました。戻りの日柄は始まったばかりで、本来であれば、少なくともあと数日は戻れる日柄が残されているところですが、この報道による頭抑えは、今後の戻り相場の困難さを感じさせます。
また、GW明けの下落からの反転は、下げで売り込んできた海外勢の先物の買い戻しが主因ですから、「戻りたいのに戻れない」という歪んだ日柄(逆日柄)で予想外の急落が起こる可能性もあります。
『以下は、5月27日配信の有料メルマガから一部抜粋。
この週の日経平均株価は、前週の終値21,117円から20,601円へ』
先週の日経平均は、PER12倍よりも下で推移しています。とくに金曜日は、強い抵抗ラインとして意識されている20,900円を試しましたが、再び切り返して21,000円台で引けています。トランプ氏の「ファーウェイ問題を貿易交渉の取引材料に使う。」という発言を、マーケットは「交渉次第では輸出規制を緩める可能性がある。」と解釈したようです。上に放れるのであれば、20,900円を守っている間に、5月20日の高値21,430円を越えておきたいところですが、再三、抵抗ラインとして試されてきた20,900円を明確に下抜ければ、一気に売りが加速する可能性が高く、今週も引き続き20,900円の攻防を見守ることになりそうです。
引き続き、買いでのエントリーは控えたいところですが、次項で解説する前提を維持できたとすれば、PER11倍を下回ったあたりが短期の買場となるのかもしれません。
投稿日:2019年5月12日
「生命保険でお金を貯めてはいけない」
「生命保険で資産形成は不可能」
こうした記事を目にすることが増えました。
こちらは、『東洋経済』の記事です。
東洋経済ONLINE版(5月12日)
ドル建ての保険を例に挙げていますが、貯蓄や資産形成を謳って販売されている生命保険は、全て同じことが言えます。
生命保険を使うことによって顧客が負担するコストは、一般的な投資信託と比べても数倍から数十倍です。
投資信託では、販売手数料や信託報酬といった、顧客が負担するコストが開示されています。
「銀行などが、販売手数料が高いものばかり販売している。」として問題視されている投資信託でも、販売手数料が3.5%、信託報酬が1.5%程度です。
一方、生命保険のこうしたコストは開示されていませんが、「売り手に支払われる手数料」だけを見ても、契約後の数年間で契約者が支払った保険料の30%ないし40%程度も「売り手への報酬」として支払われる場合があります。投資信託でいえば信託報酬にあたる、その後のコストについても、驚くような額です。(開示はされていません。)
生命保険を使った資産形成を100m競争に例えれば、30m後ろからスタートし、錘(おもり)を背負って走るのと同じです。
わざわざ高いコストの「生命保険」を使わなくても、同じ運用が「自分自身で」「低コストで」できることに、何れ多くの方が気付くことでしょう。
投稿日:2019年5月10日
『以下は、4月1日配信の有料メルマガから一部抜粋。
この週の日経平均株価は、前週の終値21,205円から21,807円へ』
メイ政権は議会を粘り強く説得しており、明日以降も何度も採決をする予定です。合意案が4回目の採決に付されたり、別の代替案が提示されたりと、時間が許す限り努力は続きます。
しかし、ついに手立てがなくなったなら、政治的な敗北を素直に認めて、「総選挙」や「国民投票」に賭けるしか残されていないことになります。これまでなら、総選挙の実施や国民投票のやり直しは、離脱プロセスを主導してきたメイ首相の政治生命喪失に直結する恐れがあるため、あり得ないだろうと思われてきましたし、メイ首相もそのように明言してきました。
メイ氏はもう続投を視野に入れておらず、完全に捨て身の状況ですから、最後のどんでん返しの可能性はあります。これならばEU側も待つと思われます。先の欧州首脳会議の結論として、合意案が英国議会で可決されない場合は、4月12日に自動的な「合意なき離脱」だと、最後通告が突き付けられていますが、イギリスが新しい方向性を示すならば、結論は長期で先送りされることも、一つの逃げ道として残されます。
EU側は4月10日にもう一度欧州首脳会議を開くともされており、この日までにイギリス側が決断をすれば、ある程度の長期で結論を延期するでしょう。合意なき離脱の恐怖は一転して、電撃的な総選挙や、国民投票のやり直しを経て、離脱撤回となる可能性は残っています。先週のメイ首相の捨て身の姿勢により、こうした新しい方向性を開く可能性が、急浮上してきたのが一つの希望です。
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『以下は、4月8日配信の有料メルマガから一部抜粋。
この週の日経平均株価は、前週の終値21,807円から21,870円へ』
トランプ氏が人事権を行使してFRBに金融緩和への圧力を強めていることが報じられています。
7席あるFRB理事ポストのうち2つが空席となっており、トランプ氏はその一つに保守系の経済評論家、スティーブン・ムーア氏を指名するとも表明しました。ムーア氏は大統領選で大型減税を立案するなどトランプ陣営幹部として働いた人物です。もう1席には、ピザチェーン経営者だったケイン氏で、2012年の大統領選に立候補した経験もある共和党有力者で、現政権の熱心な支持者の一人として知られています。ケイン氏もムーア氏も「FRBの利上げは間違い。」「FRBは利上げで景気を大きく減速させた。」と批判し、「利下げだけでなく量的緩和にも動くべきだ。」と主張しました。
トランプ氏は主要ポストに次々と側近を充てる一方、FRBだけは専門家を配置して独立性に配慮してきました。2020年の大統領選を前に、トランプ氏は0.5%の利下げを要求しており、今回、それを実現すべく自らに近い元実業家と経済評論家の2人を理事に指名したわけです。
FRBは2019年中の利上げを見送る考えをにじませていますが、「2019年、2020年とも1回ずつの利上げを模索する。(フィラデルフィア連銀総裁)」など強気な声も残ります。金融政策を決めるFOMCは、正副議長ら理事7人(現在は5人)と地区連銀総裁のうち5人が投票権を持ち、トランプ氏は自らの主張を反映できる側近を送り込み、金融政策へ介入しようとの目論見でしょう。
過大債務や資産バブルの懸念が残る中、政治の介入が強まり中央銀行の独立性への信認が揺らげば、金融市場に歪みが広がるリスクは否めません。アメリカ経済は失業率が半世紀ぶりの水準まで下がり、株価など資産価格も再び上昇基調にあります。FRBの金融引き締めを完全に封じれば、投資家らが再び過度にリスクをとるようになり、今以上の資産バブルが発生しかねません。ご承知のとおり、トランプ氏は財政政策でも拡張路線を取っており、財政赤字は近く1兆ドルを突破する見通しです。FRBが低金利を維持すれば、財政出動に歯止めが利かなくなる懸念もでてきます。
1960年代のジョンソン政権時に、大統領の利上げ停止の要請を受けて、FRBが1年以上も金融引き締めを見送ったことがあります。インフレ率は4%台へ急伸し、財政赤字も戦後最悪の水準に達してドル不安が台頭し、金本位制を放棄する1971年のニクソン・ショックに繋がった歴史があります。1980年代のレーガン大統領も、インフレ容認派の理事をFRBに次々と送り込み、インフレファイターと云われたボルカー議長を退任に追い込みました。トランプ氏が2020年に再選を果たせば、パウエル氏を交代させ、政権の意向を忠実に反映する側近を充てる可能性が強まったと思われます。
基軸通貨を抱えるアメリカで中銀の独立性への信頼が損なわれれば、世界市場への影響は甚大なものになる筈です。
『以下は、4月15日配信の有料メルマガから一部抜粋。
この週の日経平均株価は、前週の終値21,870円から22,200円へ』
日銀の黒田東彦総裁は11日(木)、G20に出席する為に訪れたワシントンで、世界経済について「今年後半に回復し、来年は十分高い成長が見込まれるというのがメインシナリオ」と楽観的な見通しを示しました。
一方、米中通商協議やイギリスのEU離脱の行方など、先行きには不確実性が残るとも指摘しています。また、「保護主義的な動きは米中双方にとってプラスにならない。」と強調し、WTO(世界貿易機関)の下で、自由貿易が世界経済発展に寄与したという認識で、G20各国の努力が必要であり、今回のG20でもそうした議論になるだろうと、今日から始まる日米協議を牽制しました。
3月末から足元にかけ、ドル円はクロス円とともに上昇していますが、世界的な株高などを背景としたリスクオンの円安という側面が強いように思います。
市場がリスクオンに傾いた理由として、
・米中通商協議が合意し、さらに中国の景気対策で世界経済の回復期待。
・アメリカの金利低下で株高と景気回復への期待上昇。
・米中経済指標の一部が改善。
が挙げられますが、これらは持続性があるとは考えにくいものです。
『以下は、4月22日配信の有料メルマガから一部抜粋。
この週の日経平均株価は、前週の終値22,200円から22,258円へ』
短期の視点でも見ておきます。
現物株の主役であるファーストリティリング(ユニクロ)とソフトバンクグループに加え、CTAなどの短期筋による日経平均先物への攻勢によって、22,000円を上抜けてきた日経平均。先週は22,201円で引けています。金曜日の110円の上げも、そのうち48円はファーストリティリングの上昇分です。すっかり仕手株化したファーストリティリングですが、そもそも浮動株のほとんどを吸い尽くした主犯は日銀です。今も日銀は前場にTOPIXが下げると、700億円もの買いで買い本尊を側面支援するという国家公認仕手株と化しています。
ここから先、買いの本尊が買い上げると、売り方が悲鳴を上げながら買い戻しを迫られることになります。ファーストリティリングの浮動株は枯れており、上値は買い方の意向次第で動かせる環境となっており、1年ほど前からメルマガで指摘していたように、「信じられない高値」を示現する可能性が増しています。また、半ばファーストリティリングに支配されている格好の日経平均もの上値も、日経平均連動型の資金を運用する機関投資家などが、指数連動のために機械的な買いを入れる状況が想定され、上値を侮れません。
こうした結果、NT倍率は先週も一本調子の上昇を続けています。
上場来高値更新のファーストリティリング、22,000円の節目を抜けたた日経平均、買い方のCTAが「どこまでやるか」、「どこまでやれるか」が焦点となります。今のところ、ジリジリとした動きをしており、まだクライマックス感は出ていませんが、NY市場の急反落などが入らなければ、最後に売り方を焼き尽くす華やかな上昇を見せてクライマックスを迎える相場つきです。
足元のTOPIXを置き去りにしての日経平均およびファーストリティリング、ソフトバンクグループの2社だけで引っ張り上げる相場は単なる仕手株的な仕掛けであり、仕掛けが終われば、少なくとも22,000円以上のところは幻の株価となると考えます。ここまでの上昇が極めて不自然で無理のある上昇であることは、一方通行で新高値を上る足元のNT倍率の推移からも十分に判ります。歪めば歪むほど、その後の反動は大きなものになると思われますが、それが今週なのか、GW後に来るのかは定かではありません。以前から買いは控えるようにお伝えしていますが、売りに優位のある弱気相場の見方は変わっていません。
投稿日:2019年4月27日
住まいの購入や建築は、人生における大きなイベントの一つ。
誰もが後悔しないようにしたいものです。
先週の講演では、後悔しないために想定しておくべきことをお伝えしました。
以下は講演内容の一部です。ご参考まで。
・今は、購入する時期ではない。
・今後、不動産は資産にならない可能性が高い。
・将来、住み替えができると思ってはいけない。
・購入や建築をするなら、平均余命+10年くらいは建て替えや大規模修繕の必要がない住まいが条件。
・住まいに使えるお金は、思っているほど多くない。
・「頭金を入れて、できるだけ早い時期に繰り上げ返済する」というのは、デフレと低金利が続く前提で変動金利でローンを組んだ場合の話。
投稿日:2019年4月24日
2019/4/24付日本経済新聞 朝刊
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO44111460T20C19A4EA1000/
証券会社は、営業体制の是正を金融庁から求められています。
問題となる営業体制の一つは、顧客に次々新しい金融商品を勧める「回転売買」。「回転売買」とは、顧客が保有する金融資産の入れ替えを頻繁に勧めことであり、その目的は販売のたびに手に入る手数料に他なりません。
こうした「回転売買」は、長期の投資成績を損ない、顧客本位でない姿勢として金融庁は監視を強化していますが、営業体制の見直しを迫らた証券会社のほとんどが、減益、または赤字と業績悪化が止まらないという記事です。
もう一つ是正が求められているのは、販売する商品。
この記事では、金融庁が「顧客本位」の営業を求めたことで、毎月分配型投資信託の販売自粛が広がっていることにも触れています。
毎月分配型投信は、『グローバルソブリン』が火付け役となり、ここ数年、人気を集めた投資信託ですが、分配金の受け取りのたびに課税されるため、
投資効率が悪く長期の投資成績を損なうことが、「顧客本位」でないとの理由です。日本人は、「皆と同じである」ことで安心しますが、「皆と同じ」が正しいわけではないことを教えてくれています。
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2019/4/24 12:18日本経済新聞 電子版
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44128200U9A420C1EE9000/?nf=1
三井住友銀行が個人向け金融商品の販売で、行員に課す「ノルマ」を廃止したという記事です。
こうして今、銀行が「ノルマ」廃止に動く理由は、顧客が求めていない金融商品を販売する強引な手法に反発が出ているためです。
金融庁は証券会社だけでなく、銀行に対しても顧客本位を徹底するよう要請していますが、従来のビジネスモデルを転換するのは容易ではないようです。
次々に新しい金融商品を販売する「ノルマ」主義から、顧客の預かり資産の増減や、新規資金の獲得額などで評価するビジネスモデルへと転換しようとしていますが、ある大手銀行では投信の新規販売のノルマを撤廃した結果、顧客資産の残高が減少するといった問題が起きています。販売手数料収入が見込める商品で「ノルマ営業」をしていた頃に比べると、個人向けの営業部門の収益力は落ちているとのことです。
販売手数料が3%を越える投資信託、更にその数倍もの販売手数料が入る生命保険の販売は、銀行にとって貴重な収益源ですから、脱却するのは簡単ではなさそうです。金融機関の営業体制が、どのように変わっていくかは判りませんが、販売手数料の高い、投資信託や生命保険で、資産形成はできないことを理解しておくべきです。
投稿日:2019年4月10日
『以下は、3月4日配信の有料メルマガから一部抜粋。
この週の日経平均株価は、前週の終値21,602円から21,025円へ』
日経平均は薄商いが続く中、21,500円付近の狭い値幅内で推移しています。上値から上値へと買われることも、大きく売り込む動きもありませんでした。
そのような中、日経ダブルインバース買い、日経平均先物売り、日経平均オプションのプット買いと、投資家たちの下落に向けたポジションが膨らんでいます。ダブルインバースは1.8億口と過去最高で、日経平均先物に換算すると2万枚の売りに相当します。これだけ多くのダブルインバース買いは、国内金融機関のヘッジ目的との観測もありますが、需給面では21,500円前後が大きな壁でしたから、下落に向けたポジションが組まれていたと考えられます。
ただ、相場は天邪鬼で、投資家達の警戒感が強まる中で上昇したりするものですが、近年の相場はAIが個人投資家をロスカットさせるまで一方向に動き、多くの投資家が投げたところで急転することがよくあります。2月27日にはライトハイザー氏が、日米協議の開催と例の為替条項にも言及しましたが、日経平均は21,500円を超えてきています。22,000円を目指してくれば、下落期待のポジションは解消され、一旦大きく上昇する局面もあるかもしれません。
Artificial intelligence concept with text AI in binary code matrix on virtual screen and person working with cyber technology and automation
『以下は、3月11日配信の有料メルマガから一部抜粋。
この週の日経平均株価は、前週の終値21,025円から21,450円へ』
先週の日経平均は半値戻しという節目の攻防の中、週明け早々に「米中首脳会談」が3月27日に行われる方向で調整中だという好材料が出ました。既に大部分が織り込み済みだったとはいえ、米中協議が好転していくことへの期待で、日経平均はぽんと21,800円台まで上昇しました。
先週はメジャーSQでもありましたから、この勢いで上への波乱が起きれば、日経平均は22.000円をターゲットとして、さらに上に跳ね上がるという展開もあり得なくはないという状況ではありました。しかし、CTA戦略(買いポジションと売りポジションを同時に取る)を採用する外国人に因る先物の買い戻しが日経平均を上げてきたわけです。相変わらず薄商いが続き、現物を買う動き(中長期の資金)は見られず、そうしているうちに、メジャーSQを要因とする思惑が働く前に、世界と日本の経済と景気の動向が上に抜ける展開を許さなくなってきました。
需給面で大きな壁であった21,500円を上抜けましたが、AIが投資家たちのロスカットを誘ったように思われます。薄商いで板が薄い上に、AIが機械的に売買しますから、上げ過ぎや下げ過ぎの局面が頻発しています。
『以下は、3月18日配信の有料メルマガから一部抜粋。
この週の日経平均株価は、前週の終値21,450円から21,627円へ』
日本の製造業が一斉に業績予想の下方修正をしています。主要181社の2018年度の経常利益の合計は、昨年11月時点から約1割減で、2兆5000億円も吹き飛んだことになります。減益要因の殆どは中国経済の下振れと考えられ、中国に巣くう根深い問題を考えれば、中国頼りの企業の成長力は鈍り、日銀の異次元緩和からの出口は更に遠のくことになります。そして、異次元緩和の継続は、金融機関の体力を失わせます。
中国の景気低迷は、銀行融資の不良債権化を生むだけではなく、日本経済全体の不況入りをもたらします。マイナス金利政策によって、銀行の調達金利と貸出しの利ザヤは縮小しました。超低金利に苦しむ邦銀は、保有の日本国債を大量に売って(日銀が買って)、利回りが少し高い海外の債券を買うようになりました。
中でも一番人気は、低格付けの会社の発行する債券をまとめたCLO(ローン担保証券)です。利回りが高いので、日本の地銀や雑金融機関がこぞって買い、農林中金などは、CLO市場全体の1割に該当する6兆円も買い占めています。このCLOを組成には、低格付けの社債が組み込まれています。低格付社債を発行する会社の多くは、元本や利息返済脳力に乏しいので、債務を別の社債に借り換えることで凌いでいます。
今のところ、農林中金をはじめとする日本の銀行がCLOを大量に買っているので、借り換えがスムーズに行っていますが、中国から波及した不況によって日本の銀行が不良債権増となれば、その損失を埋めるためにCLOを売る必要に迫られます。
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日本の銀行が売りに転じれば、CLOの自転車操業が止まることとなり、日本の銀行が保有しているCLOも多額の損失が生まれることになります。
2月4日号のメルマガで、『サブプライムローンを集めて組成した債券のCDO(債務担保証券)を多く保有していたベア・スターンズやリーマン・ブラザーズが、CDOを売却しようとしているうちに市場価格が急落し、あっという間に90%も値下がりしました。それでも売れなかったため、資金繰りに窮して破綻したものです。』と紹介しました。
また、1997年のアジア通貨危機は、山一證券をはじめ多くの銀行、証券、保険会社が破綻する過程で、日本の金融機関がアジアから資金を引き揚げたことが遠因とされています。バブルとされる中国経済の弾け方如何では、日本初の金融危機の可能性もシナリオの一つとして頭に入れておいた方が良いかもしれません。
『以下は、3月25日配信の有料メルマガから一部抜粋。
この週の日経平均株価は、前週の終値21,627円から21,205円へ』
22日(金)のダウ平均は前日比で460ドル下落しています。1月3日の660ドルに次いで今年2番目に大きい下げ幅です。急反落の原因は、欧州、とくにドイツの景気減速に対する懸念をはじめ、アメリカの株式市場がブラックアウト期間(決算発表前5週間から決算発表後2日間は、自社株買いの自粛期間)から売りが先行したことに因ると思われます。
更に、アメリカ債券市場では長期金利が一段と低下し、10年物が3か月物を下回る逆イールドが発生し、投資家のリスクオフに繋がったようです。
FRBは20日(水)、2019年中の利上げ見送りの見通しを示し、米金利に強い低下圧力がかかり、22日(金)に日欧の金利低下と景気指標の悪化が重なって
米債買いが勢いづいた格好です。長期金利の指標である10年債利回りは一時2.41%台に下げ、約1年3カ月ぶりの水準まで低下。2.46%台で推移した3カ月物を下回りました。逆イールド(長短金利の逆転)は景気減速や株価暴落のシグナルとされていますが、現在のような低金利下においてもそのセオリーどおりとなるのでしょうか。
投稿日:2019年3月14日
本日の日経新聞が外貨建て保険に関する記事を掲載しています。
記事によると「利回りやリスクの説明が不十分」といった外貨建て保険に関するの苦情が増えており、生命保険協会の調査では、こうした苦情は2017年度に1,888件にのぼり5年前と比べて3倍に増えているとのことです。苦情原因の77%は「販売時の説明が不十分」というもので、具体的には「元本割れリスクについて適切な説明を受けていない」(43%)が最も多いとしています。
金融庁は2018年9月に公表した行政方針で、投資信託などと比べて運用コストや実質的な利回りが分りにくいことを指摘していました。保険商品をつくる生命保険会社と、外貨建て保険を販売する生命保険会社や銀行は、金融庁に問題を指摘されてから1年以上経って、ようやく見直しに動き始めました。昨年11月に金融庁幹部が大手生保を呼び出し「我々の問題意識がうまく伝わっていないのか」と見直しを強く迫ったことで、ようやく重い腰を上げた格好です。
背景には、マイナス金利政策があります。本来、保険の役割は保障を提供することにありますが、近年、高い保険料(掛け金)の契約を獲得するために、貯蓄性保険の販売が目立っていました。しかし、マイナス金利政策によって、生保各社は円建ての貯蓄性保険を次々に販売停止してきました。そのような中、生保各社や売り手にとって、為替変動を考慮しなければ高めの利回りをアピールできる外貨建て保険は、貴重な稼ぎ頭だったと云えます。生命保険会社と売り手の双方に顧客に説明する責任感が欠けていたところへ、外貨建て保険が収益源として浮上したことが、多くの苦情に至った原因だと思われます。
記事には更に興味深い話があり、これこそが問題の本質です。
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以下、記事より抜粋
『銀行は顧客対応に逃げ腰だった。2月初旬、金融庁の「怒り」を受けて契約済みの顧客に説明する体制をつくろうとしたが、その実施主体を売り手や銀行ではなく生保にする案も議論し始めた。これには生保側が「何のために高い販売手数料を払っているのか」と押し返して銀行が顧客の前面に立つことで決着したが、「販売ありき」の銀行の実態を浮き彫りにした。』抜粋ここまで
金融庁は、投資信託などと比べて運用コストや実質的な利回りが分かりにくいことを指摘していますが、分りやすく表示すれば、保険で貯蓄をすることの合理性の無さが露呈することになります。貯蓄や資産形成の手段として用いられる投資信託と比べ、保険販売で売り手が得る手数料は数倍から数十倍も高くなっており、そのため昨年は、保険の販売手数料が投資信託を上回る銀行が相次いでいます。
賢く生きていくためには、『売り手が得る手数料は、顧客が負担するコストであること』を理解しておかなくてはいけません。
投稿日:2019年3月10日
『以下は、2月4日配信の有料メルマガから一部抜粋。
この週の日経平均株価は、前週の終値20,788円から20,333円へ』
マザーズ市場で創薬ベンチャーのサンバイオ【4592】が、連日のストップ安で株価が一気に半値以下となっています。サンバイオは人気のバイオ銘柄で、今回の暴落で多くの投資家が退場させられました。一方、日経平均は国策指標ですので、国家としての経済力や政策といったマクロの動向が反映されるものです。実際、目先の戻り天井かと思われた1月21日の高値20,892円を超え、株価位置もPER12倍をわずかに上回って推移しています。
日経平均のこうした安定は円安が大きな要因と思われますが、FRBが本当に金融政策を方針転換して金融緩和へと舵を切るようになれば、円安要因が一つ減ることになります。実際、先週は利上げ停止の示唆から、やや円高へと向かい始め1ドル109円を割ってしまいました。これにともなって、日経平均の上昇圧力も削がれてしまったようで、1月31日(木)、2月1日(金)と、高値をつけた後は売りに押されて、20,700円台まで下げています。少なくとも金利政策の方向性だけをみれば、円高が進む素地ができつつあるのは日経平均にとっての不安材料です。
アメリカの経済が強くなっていくことで、相対的にドルが強くなるプロセスは、基本的には好ましいことだといえます。基本的には金利差と経常収支の差が、為替を動かす2大要因とされていますが、相手国が好況で金利が上がったり、相手国の経常収支が改善されることで、自国の通貨が切り下がっていくというのは、健全で好ましいサイクルといえます。日本経済が衰退するのに伴なって通貨が弱くなるのは悪い円安ですが、アメリカ経済が強くなることに伴なって相対的に日本の通貨が弱くなっていくのは、日本経済に長期的な発展をもたらす、良い円安であると言えるわけです。
FRBが利上げ継続の余地を残しつつ、アメリカの経常収支が改善されるのに伴い、良い円安が続くというのであれば、日本市場にも追い風となります。この傾向が2月に入っても続くなら、為替は1ドル110円という適温圏内から大きく乖離することはないと思われますし、日経平均は難所と思われる21,000円ラインにチャレンジすることもできそうです。
『以下は、2月11日配信の有料メルマガから一部抜粋。
この週の日経平均株価は、前週の終値20,333円から20,900円へ』
マーケットは時に不思議な力が働くことがあります。誰がマーケットコントローラーなのか、我々には知る由もなく明確に解説することはできませんが、重要なことなので触れておきます。
通常、上昇相場は、押し目を作りながら安値を切り上げていくものですが、ダウは昨年のクリスマス明けから、押し目らしい押し目もなく3,000ドル以上の上昇をしています。FPBが利上げ停止を示唆したり、経済統計が市場予想以上に良かったこともありますが、それでも意外な上昇と云えます。
昨年末からの下落基調のまま、90日間協議の期限を迎えることになると、トランプ大統領誕生前の株価を割り込むことになりかねず、株価を通信簿にし、就任後の株高は自分のお陰とするトランプ氏にとって、許されることではありません。90日間協議の期限を控え、ある程度株価が下がっても20,000ドル近辺を維持できるバッファーが欲しいところでしょう。マーケットコントローラーが誰なのかは判りませんが、そうした力学が働いているように見えるとともに、やはり米中協議は穏やかに幕を引くことはなさそうです。
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『以下は、2月18日配信の有料メルマガから一部抜粋。
この週の日経平均株価は、前週の終値20,900円から21,425円へ』
このメルマガでは、何年も前から「2020年代は戦争の時代」、「第3次世界大戦」の可能性について触れてきましたが、最近、世界中が第一次世界大戦に注目し、悲劇を起こした原因が何だったかについて様々な議論をしています。決して、終戦から100周年が理由ではなく、現状が大戦前夜に似ているからです。
第一次世界大戦は、参加した主要国の誰もが何とか回避したいと考えていましたが、自国が不利になるのを恐れるあまり、お互いに相手を牽制する行動をとったため、誰も望まない大衝突に発展したとされます。
オーストリア皇太子がセルビアで暗殺され、これが翌月に世界大戦に発展したわけですが、皇太子の葬儀を営む際にオーストリア皇帝が、ドイツ皇帝とロシア皇帝の双方を招待して、独墺露の三皇帝が一堂に会してさえいれば、大戦争にはならなかったと云われています。しかし、同時に暗殺された皇太子の妻は、ハプスブルグ朝内での身分が低かったため、皇帝は独露の二皇帝を呼びませんでした。また、ドイツ皇帝とロシア皇帝の両名も、戦争をするつもりがないことを示すために、それぞれにバカンスなどに出かけて明確な意志表明を避けてしまいました。
こうして皇帝達が一堂に会する機会を逃し、特段の意志表示をしなかった一方で、それぞれの国の政府と軍は万一を考え、お互いに予防的な措置をとりあったことと、明確な意志を示さない大国の意図を誤解し、複数の小国がやや暴走気味に動いたことで国家間の恐怖が恐怖を呼んで、
あっという間に史上稀なる大きな悲劇を引き起こしたのは世界史で学んだところです。
その報いとして、独墺露の三皇帝は数年の間にすべて滅亡し、帝国解体の憂き目にあいました。今、英独仏伊の指導者らが陥っている状況は、これまた100年前の大戦前夜によく似ているといえます。誰もが合意なき離脱など望んでおらず、経済的な混乱を避けたいと考えていますが、さりとて自国が不利になる形で交渉に応じて、自らの政権を崩壊させるわけにもいきません。
それ故もあって、指導者が一堂に会する形で、問題の解決に取り組む機運は全くみられず、 残り40日あまりとなっているのに合意なき離脱を回避する方策は出ません。この状況が今週以降も続くのであれば、イギリスによる合意なき離脱を懸念して、世界市場が3月危機に陥る可能性は排除されることはないと思われます。
ともあれ、トランプ政権の市場重視への転換で、相場の空気が一変しかけた先週でしたが、こうした危機の火種が燻り続け、
3月危機に発展する可能性があることを日経平均の波乱要因としても注意しておくべきです。
『以下は、2月25日配信の有料メルマガから一部抜粋。
この週の日経平均株価は、前週の終値21,425円から21,602円へ』
日米協議、ブレグジット、中国経済、アメリカ政局など不確定要素が満載の中、良い材料だけに反応して、アメリカの株高が続いています。
「景気が良くて株価が高いのであれば、金利は上がる筈」ですし、「景気が良いかどうかはっきりしないのに金利が上がらないなら、ドルは安くて然り」ですし、「景気が悪いなら金利が下がり、ドルは安くなる」筈です。現在のアメリカの株高は、「アメリカの景気は良い、だけど金利は上がらない、だけどドルは高い。」わけですから、何かが持続不可能という不可思議な状況の中で起こっていることを認識しておく必要があります。
日経平均もアメリカの株高につられて、ふわりふわりと上昇しています。ただし、日経平均の上昇は、売買代金が週を通じて2兆円前後のという薄商いが続く中、昨年末から売り越していた外国人先物筋の買戻しに因るものです。(現物は外国人も売り越しが続いています。)「アメリカの景気は良い、だけど金利は上がらない、だけどドルは高い。」の均衡が崩れた時に、上に跳ねるか下に放れるのか判りませんが、定石どおりであれば出来高をともなって下に放れる可能性が高いと思われます。
先週21日(木)ロイターのリーク記事で、米中協議では6項目の「構造改革」について、具体的な覚書が準備していると報道されたことで、
日経平均も一時的に21,500円台に乗せました。さすがに週末は21,500円で利確の売りに押し返されましたが、大きく崩されそうな雰囲気もみられぬまま引けています。もっとも、売り崩されなかったのは、閑散に売りなしの相場格言のとおりであり、ここから先、上値へと買われていくには、連日3兆円に迫るくらいの売買代金が必要と思われますが、買い方を積極的にするにはやはり材料不足です。
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