【日経平均株価の振り返り】
先月の日経平均は2万円を再突破しました。20日には高値20318円、終値も20230円とレンジを抜けて年初来の高値を更新しました。その後、調整と利確で下げる場面も見られましたが、2万円ラインは割り込むことなく底堅く推移しています。
バブル化の様相を呈してきた米国経済と、日米金融政策の違いからくる円安への期待、日銀等の公的機関による株買いといった追い風があります。日経平均が20,000円を超えても公的資金は「買い」の様です。また、日銀だけでなく、昨年より毎月月初にゆうちょ銀行・簡保が買いを入れているのに加え、先月16日以降、ほぼ連日15時過ぎになると160億円の謎の買いが入りました。
日本企業の稼ぐ力(EPS)は健在で、21000円(PER15倍)前後までの上昇は、不思議でないという状況が続いていますが、先行指標となるはずの金融株は、なかなか高値を更新できず、やはり自然な形での上昇とは言い難いものがあります。予てから書いてきた日米の政治リスクと各地の地政学リスクは、収まる気配がないどころか、だんだん悪化しつつあります。なかなか上抜けしないのも、こうした不安の心理が背景かもしれません。
都議選では、自民党の歴史的な敗北となりました。都議選告示前日の自民党2回生議員によるショッキングな不祥事や投票日前日の秋葉原事件は予想以上の苦戦を強いられる原因となったようです。政局も緊迫の度を深めています。通常国会を早期閉会することで、安倍政権は逃げ切った筈ですが、財務省や文科省のほうは、新たなリークを小出しにすることで、秋の臨時国会まで政権を追い詰め、権力闘争に挑んでいる様子です。今回の都議選は自民対都民ファーストであり、さらに言えば「安倍対小池」でした。
支持率が頼りの安倍総理が首都決戦に敗れ、進行中の与党内の政局が加速し、まさかが起こる危険が増すことも頭に入れておくべきです。安倍政権側は閉会中審議を断固拒否して、内閣改造を前倒することでダメージを回復し、秋の臨時国会での態勢立て直しを図るつもりですが、都議選の結果を踏まえて何がどう動くのか判然としません。こうしたこと全てが株価にも影響し、株価を急落させる恐れのある不安材料といえます。
【中東情勢の北朝鮮問題への影響】
IS掃討作戦が終わりを迎えるにつれ、中東情勢がだんだんと緊迫化しています。ISにはサウジアラビアやカタールなどが背後にいるとはいえ、表面的にはサウジなどのスンニ派諸国もISを非難しています。ISと戦うイランなどシーア派諸国を邪魔しないことで、中東全体の秩序が保たれていた訳です。
しかし、疑似国家のISが消滅して、サウジとイランの緩衝地帯がなくなれば、両勢力は真正面から対峙する可能性が出てきます。スンニ派の盟主サウジにとっても、シーア派の盟主イランにとっても、自身の勢力圏を拡大する正念場ですから、今後何をやりだすかわからない怖さがあり、米軍も布陣を中東に向けています。
その中東情勢のあおりで、北朝鮮情勢にも影響が出ています。米軍が北朝鮮を滅ぼすと決めるならば、6月中旬頃までが最も布陣が充実していましたが、北朝鮮に対する米軍艦隊の一部を中東に向けざるを得なくなり、軍事的包囲網が緩んでいます。
中国側も強気での外交交渉を進めるために、北朝鮮との石油・石炭の輸出入を完全に止めて、軍事的・経済的包囲網に締め上げられたら北朝鮮は持たないだろう。金正恩氏が7月までに中国に核兵器の放棄を約束させられ、これを契機に北朝鮮が内部崩壊していく。あるいは、金正恩氏が中国やローマ法王を仲介者として亡命するというのが、望ましい穏健なシナリオでした。
ところが、報道でも目にするように、アメリカと中国の動きはチグハグです。ここ最近のトランプ氏の発言を見ていると、東アジア情勢より中東のほうを重視しているのは間違いありません。トランプ大統領の最初の外国歴訪は中東でしたし、真の大統領といわれる娘婿クシュナ―氏がユダヤ人であることなど、トランプ家自体が中東に密接な利害関係を持っています。北朝鮮の核は米国にとって将来の危機ですが、中東の大乱は米国とトランプ家にとって現在の危機です。
北朝鮮は制御不能でも、中国とは対話が成立します。また、北朝鮮の隣には日本という強国がいるので、万一の場合には日本に戦争をさせれば済む(そのために日本に安保法制を作らせた)と思っているはずです。中東には頼りなるような同盟国はいませんから、米軍が関与しない限り、米国が世界のエネルギーをコントロールできなくなり、最悪の場合はイスラエルが消滅します。こうした事態に備えるため、すでに1個の機動打撃群は中東に向かったとされ、これで北朝鮮情勢において米軍のほうから動く可能性は、かなりの程度、低下したといえます。日本政府としてはがっかりな展開です。
【イタリアで2つの銀行が破綻】
また、先月はイタリアで2つの銀行が破綻しました。ECBもイタリア政府も衝撃を最小限に食い止め、連鎖的な悪影響を防ぐべく様々な手を打っています。今のところ影響は限定的とされていますが、2008年秋のリーマンショックも、今から思えば2007年春にBNPパリバ系のヘッジファンドの破綻から、その兆候がありました。金融システムの点からはやはり警戒が必要な話です。
【官邸が恐れる次の爆弾】
通常国会の閉会で逃げ切ったはずの加計学園問題ですが、文科省や背後にいる財務省は
政権側に逃げ切りを許すつもりはなさそうです。お盆明けくらいから、再び様々な情報がリークされると、9月の臨時国会は相当に際どいことになるかもしれません。
安倍総理はそのための予防線を張り、通常国会が閉会するや否や本人が謝罪会見をしたり、森友学園に強制捜査という制裁を与えたりして、対抗策を打ちました。また、加計学園以外にも広く獣医学部の設置を許すとの発言は、恣意的な色を消そうとしているようにみえます。
もともとは、森友学園疑惑が噴出した際に、総理自らが「自分が関与していたら辞任する」と発言したことで、政権を倒す目安を与えてしまったことが始まりです。この一言が秋まで尾を引くと、改憲国会どころの話ではなくなります。この秋の臨時国会は、憲法改正に国民の関心を引き寄せて、改憲ムードを盛り上げたいはずです。これまでの政権スキャンダルは、官邸が上手くダメージを最小限にとどめてきましたが、今回、とくに加計学園に関する疑惑については、その官邸自体が火元になってしまいました。
官邸の陣容が同じである限り、官邸に対する攻撃は止まないでしょうし、官邸に対する国民的反発も和らいでいくとは考えられません。ならば、官邸のメンバーをそっくり入れ替えてしまうか、数人をトカゲの尻尾として切ることで、ダメージを抑えることが想定されます。8月末とされる内閣改造について、政権を支える2人の実力者である麻生副総理と菅官房長官菅留任が衝突しないよう、細心の配慮がなされているはずです。しかし、菅長官が留任すれば国民の感情的な反発は止まず、麻生副総理との間で感情的な軋轢が深まる懸念があります。
今、財務省は官邸の弱体化をとらえて内部から浸食し、安倍政権が今後長く継続することになるにせよ、財政再建維持と消費再増税(6月の骨太の方針から消費再増税の文字が消えました)だけは堅持させるよう、ひとつひとつ着実に布石を打っているようです。
官邸にとって森友、加計問題の次なる脅威は、東京五輪の利権です。東京五輪に関する利権は、菅官房長官、二階幹事長、麻生財務大臣が絡んでいて、この3人が承認しないと何も動かないと言われています。記憶にある方も居られると思いますが、一時、小池氏が五輪の闇を暴くと言ったとたん、二階氏が小池氏に接近し、小池氏はその後何も言わなくなりました。
菅長官のご子息が勤める大成建設が、新国立競技場メインスタジアムを受注したのは、今や周知の事実です。お蔵入りとなった案では、空調設備は文科省前事務次官前川氏の実家である前川産業が担当するはずでしたが、採用案からは屋根が撤去され空調設備が不要になっていた経緯があります。実はこの時から菅氏対前川氏の戦いが始まっていました。
森友も加計も政権支持率を大きく下げるインパクトがありましたが、この東京五輪の利権が表に出るようなことになると、政権も自民党も吹き飛ぶ可能性すらあります。万一、このようなことになると、これまでのアベノミクスによる株価上昇は、巻き戻しされることになります。




