外貨建て保険のセールストークは本当?

ゼロ金利の日本円では、貯蓄型生命保険の商品設計ができません。そのため近年は、金利のある米ドル建ての生命保険が、資産形成の目的で販売されています。

はたして、外貨建て保険を使った資産形成は効果的なのでしょうか。

3つの観点から考察してみます。

1、「成長率が高い国の通貨は高くなる」は本当?

2、「日本は財政難だから基軸通貨のドルを持つべき」は本当?

3、為替平価とは?

 

1、ドル建て保険のセールスでは「成長率が高い国の通貨は高くなる」が常套句になっています。

今から約20年前の1998年は、ドル円は1ドル=140円程度でした。その後、日本の経済成長率はアメリカを下回り続けています。「高成長の国の通貨は高くなる」というセールストークが正しければ、円安ドル高になっているはずです。

実際は、経済成長率が高かったアメリカのドルが上昇したわけではなく、最近では1ドル=110円程度(この投稿をしている時点では108円台)と円高ドル安が進んでいます。この間、ドルに対して円が約20%高くなった計算になります。

更に詳しく見ると、民主党政権下で経済が低迷した2012年頃まで円高が加速し、アベノミクス始動で経済がやや上向いた2013年以降、逆に円安に戻っています。

「経済成長=通貨高」という説明には、かなり無理があることが判ります。

 

2、「日本の財政は悪化を続けているので、基軸通貨のドルを持っておくべき。」といったセールストークも多いようですが、基軸通貨のドルは、果たして安全と言えるのでしょうか。

円も将来どうなるか判りませんが、ドルだから信用できるということではありません。もちろん、ユーロも同じです。

一般に知られているアメリカの政府債務は2000兆円くらいですが、地方債務などを合わせると、国家が抱える債務額は4000兆円とも5000兆円とも言われています。(詳細は闇の中)。しかも、日本と同様に、その額は年々増加しています。

続いて、経常収支は2018年で500兆円の赤字。

さらに、対外純資産に関してはマイナス。約900兆円の純負債を抱えています。因みに日本の対外純資産は300兆円以上。

主要国の対外純資産

つまり、国家が借金まみれなのは日本だけではなく、アメリカも同様であり、しかも経常収支も大赤字。いわゆる「双子の赤字」です。

アメリカは、国外から絶えず新しい投資資金が流入してこなければ、すぐに資金繰りが厳しくなってしまう状況なです。

「双子の赤字」と聞いて「プラザ合意」を想起する方も多いと思いますが、実際、多くの識者が「最後はトランプ大統領が、第2のプラザ合意的なドル安政策を強行して、対外債務の一部を実質的に帳消しにするのではないか」と指摘しています。

財政状態が厳しいのは日本だけではなく、アメリカも同じです。見ようによってはアメリカの方が厳しい状況かもしれません。

よって、通貨分散は意味がないわけではありませんが、主要通貨が手をつないで価値暴落する可能性を想定しておくべきだと考えます。それは、「ドル安、円安、ユーロ安」つまり「主要国揃って貨幣価値の下落(インフレ)」ということです。

 

3、為替平価とは、高金利の外貨は為替レートが通貨安になることで、長期的には外貨で得られる金利を為替が相殺する、という理論です。

この「為替平価」に当てはめれば、外貨建ての生命保険は、円高によって利回りが相殺されることになり、高いコストによって実際の利回りはマイナスになってしまいます。

このように、為替は保険セールスの現場で語られているほど単純ではありません。

 

日本の円と比べればドルは高金利に見えますが、長い時間軸で見れば米ドルの金利も歴史的な低水準です。

アメリカの金利

 

 

 

 

 

生命保険を資産形成に利用するということは、こうした低い金利で長期間拘束されることになります。為替変動は、ドルで得られる2%程度の金利※を得るためのリスクとして、見合うものではありません。(期待収益<為替リスク)

※予定利率が3%なら、コストを差し引いた実質的な利回りはドルベースで2%程度