12月の「日経平均株価振り返り」と「主なニュース」

『以下は、12月3日配信の有料メルマガから一部抜粋。
この週の日経平均株価は、前週の終値22,351円から21,678円へ』

アメリカは中国への追加関税を猶予することを決め、交渉決裂を一先ず回避しました。ただし、完全解決ではなく、中国の知的財産保護などで引き続き妥結点を探ることになります。
アメリカは既に2500億ドル分の中国製品に制裁関税を課していますが、2千億ドル分は年末商戦が終わる2019年1月以降に、関税率を10%から25%に引き上げる予定でした。今回の会談で、トランプ政権は1月以降の関税引き上げを猶予するとし、関税合戦の激化をひとまず回避したものの、90日以内に合意できなければ、アメリカは2千億ドル分の中国製品の関税率を10%から25%に引き上げるとしています。また、発動猶予は中国の構造改革が条件で、5つの分野で引き続き協議し90日以内の合意を目指します。

米中が対立していたハイテク分野の政策見直しは、協議の対象から除外されています。トランプ氏は、中国の先端産業育成策「中国製造2025」を強く批判していましたが、産業補助金の撤廃など、これまでの要求を声明に盛り込むことを避けました。中国の国家資本主義の柱である産業補助金の見直しを、習政権が「認めない」と強く反発しており、同分野では中国側の要望が通ったと見られています。アメリカにとっての本丸は、対中貿易赤字の縮小ではなく、国家のマネーで資本市場を荒し世界の覇権を取ろうとする中国を封じ込めることですから、この点におけるアメリカの譲歩は不自然に思われるところですが、今回、アメリカの狙いの一つは、中国との間で何らかの協議体を常設して、構造改革の要求を永続させることです。

これは中国が恐れていた「日米構造改革協議」と同じです。
一時はアメリカのGDPの6割にまで達して、21世紀にアメリカを抜き去るとされていた日本は、為替要求で円高を強制され(プラザ合意)、構造改革協議で持てる強みを除去され、全く成長しない停滞国家に転落させられました。今、中国のGDPはアメリカの6割に達しており、あと10年程度でアメリカを抜き去って世界1位の座を占めるとされていますが、30年前の日本がされたのと同じことを、今、中国が強要されているわけです。

アメリカとトランプ氏にとっては、中国への強硬姿勢が非常に重要な政局上の切り札でもあります。次の大統領選に勝利するには、支持率浮揚の有力なカードでもありますから、米中対決は当然に維持されるものと思われます。だからこそ、中国市場の戻りはイマイチですし、そうなることが目に見えているからこそ、中国政府も下手に出ているのでしょう。今回の米中首脳会談を受けて年内は株高を維持できたとしても、トランプ政権が突如強硬化する可能性は、充分にあるものと思われます。何れにせよ、アメリカの中国への要求は甘いものではなく、決裂の可能性がつきまとう「3ヵ月の休戦」です。
 
日米TAG(FTA)の枠組でも同じです。安倍政権は防衛費の対GDP比率を1%から1.3%へと引き上げるという決断によって、新鋭戦闘機の導入費用分だけで2兆円近くの現金をアメリカに渡し、トランプ氏に花を持たせていますが、これからが彼にとっての正念場である時に、「脅せば必ずカネを出す」存在であり、支持率浮揚にも役立つ日本に対して、次の要求を控えることを期待するのは、無理があると言えるでしょう。つまり、米中首脳会談で世界経済が一時的に凪となり、日本と中国の株価が上昇したとしても、期限付きの小休止であることを認識しておくべきです。

『以下は、12月10日配信の有料メルマガから一部抜粋。
この週の日経平均株価は、前週の終値21,678円から21,374円へ』

3日(月)のアメリカ国債市場では、2年債と5年債、3年債と5年債の利回り格差(スプレッド)がマイナスとなりました。通常、先々に経済発展の見通しがあり、かつ、債権者が長期にリスクをとる以上、短期よりも長期金利のほうが高くなります。しかし、景気後退が予測される場合などは、短期金利を下回って長期のものが低下して、この長短金利差が逆転することがあります。それが逆イールドカーブの状態です。

長短金利の逆転は10年ぶりのことで、前回発生した10年前というのは、サブプライム・ローン問題、つまりリーマン危機の直前のことです。
逆イールドは景気減速を予兆する最も頼りになる前触れの1つと考えられていますから、翌4日のアメリカ株式市場が2ヶ月ぶりの大幅安となったのも無理はありません。この逆イールドが、2年債と10年債、3年債と10年債に飛び火するかが注目されるところです。

グラフ挿入

赤線が10年債利回りから2年債利回りを引いたもので、これがマイナスを示す時期が逆イールドです。なお、縦の網掛けは不況期を示しており、青線がアメリカ株の前年比の上下動を表しています。過去40年の間に逆イールドは4回あり、その後は必ず不景気に突入しているのが判ります。そして、不況時には株価は必ず大きく下げており、例外なく逆イールド→不況入り→株価大幅下落の流れがあるのです。

11月26日号の【5、米国債売りポジションの縮小】で、投機筋の株買い債権売りポジションが急速に縮小していると記しましたが、更に株売り長期債権買いに進んだことが主因と考えられます。少し前には10年債が3.27%まで上昇し 、世界株安の引き金となったばかりですが、長期金利が上がっても下がっても株安を招くという状況です。アメリカの長期金利は上下どちらに行っても、アメリカ株と為替の両方の経路を通じて日経平均に大きな影響を与えるものですし、資本主義の仕組みにおいて金利(債券)は背骨です。10年債も2年債に近接していることから、アメリカ国債の動向には引き続き注視しておく必要があります。

『以下は、12月17日配信の有料メルマガから一部抜粋。
この週の日経平均株価は、前週の終値21,374円から20,166円へ』

日経平均はPER12倍付近で週をまたぎ、世界経済の不安で下ブレの警戒感が強まっています。アベノミクスで行われてきた資本市場改革、労働資本市場改革の成果で、日本企業の「稼ぐ力」は格段に向上しており、日経平均EPSは1,790円近辺と史上最高レベルです。一方で、異次元緩和と財政出動の双方をやっても、一般労働者の実質賃金は増えていません。少なくとも日本企業は年間数百兆円の規模で、継続して内部留保を拡大できるくらいには、家計から企業への所得移転が成されました。また、「2%の物価上昇」という目標達成は失敗しているものの、少なくとも本来個人が受け取るべきカネが企業に集まっているため、株高政策としては成功だったことが示されているといえます。古くからの読者であれば、アベノミクス始動当時から、『一般国民を貧しくさせ、大企業と資本家のための政策』と解説してきたのを覚えておられると思います。

安倍政権は、来年以降も存続して様々な「策」を出し続けることを模索しているようです。しかし、一通りの「策」は出し尽くしたとみられ、今後、安倍政権のやることは賭けの要素も濃いと思われます。世界経済が突発的な材料で荒れたり、安倍政権の頓挫や挫折が見込まれたりする場合は、日経平均は底を抜いて大きく割り込む形で崩落する危険が常に付きまといます。情勢があまりにも流動的であるため、PER12倍より上に行くか下に行くかは、流動的で突発性を高める外部要因や先行きのやや不透明な国内の政治状況に大きく左右される状況です。また、来年にはかなり大きな混乱や混迷が、年明け早々から予想されるところですので、そうしたことが材料視されてくるにつれて、相場はまた流動的になっていくでしょう。

『以下は、12月25日配信の有料メルマガから一部抜粋。
この週の日経平均株価は、前週の終値20,166円から20,014円へ』

先週末の日経平均は2万円ラインで跳ね返しましたが、その後の先物ナイトセッションは、19,790円で引けています。チャートも、3度目の「下放れの並び黒」を作りました。(酒田五法で云う「下放れの並び黒」とは、大暴落の前兆となることがあるローソク足の並びです。)直近の2回は、日銀、年金の必死の買い支えもあり反発を見せましたが、防衛ラインと見られていた21,000円を下抜けたように見えます。

東京証券取引所が20日に発表した投資部門別売買動向によると、12月第2週(10~14日)の外国人投資家の売り越しは1613億円でした。
これで2018年の外国人投資家の売り越し額は5兆円を超え、1987年のブラックマンデー(7.1兆円の売り越し)以来の規模となり、2008年のリーマン・ショック(3.7兆円)を上回りました。外国人投資家は、アベノミクス始動時から日本株を積極的に買い、2015年には累計買越額が20兆円に達しましたが、以降は売り越しに転じ、買い越し額は10兆円弱まで半減しています。また、2018年の個人投資家は925億円の売り越しです。この外国人投資家と個人投資家の日本株売りを日銀、年金、ゆうちょ、自社株買い(買い越し額2.5兆円)で買い支えてきたのはご承知のとおりです。

今年の日本株の買い越し売り越し額を纏めると、以下のようになります。

・外国人投資家  ▲5兆円
・IPO    ▲3兆円
・日本銀行    6.5兆円
・事業法人   2.5兆円(自社株買い)
・投資信託    1.1兆円(インデックスやアクティブファンドは、上がる下がるに関係なく指数に連動させるために買わざるを得ない)

12月までは日銀と自社株買いと投信で10兆円を超える買い越しが、外国人による巨額の売りを吸収して、まだお釣りがありました。2013年(アベノミクス始動)から、大勢の投資家が資産を数倍に殖やしたとおり、世界の中でも日本株市場は有望でした。日銀の買いだけで、年間6兆円もの買い入れが計算できますから、買いが買いを呼んで資金が流入してきたわけです。ここに来て、日銀、年金、ゆうちょでは買い支えできない程の外国人の売り越しが起こっているのは、日銀が株買いを止める前に全て売り切りたいという思惑かもしれません。

12月にはECB(欧州中央銀行)も量的緩和をストップしました。中国も経常黒字がゼロになり、世界への投機資金の供給は止まりそうです。
日銀だけが量的緩和を止めておらず、世界の動きに逆行していますが、日本株を買うのは、儲かった企業による自社株買い位しかありません。
景気が後退局面に入ったのであれば、頼りの自社株買いも未知数となります。