8月の「日経平均株価振り返り」と「主なニュース」

『以下は、8月6日配信の有料メルマガから一部抜粋。
この週の日経平均株価は、前週の終値22,525円から22,298円へ』

米中の貿易戦争は、まだ駆け引きの段階とも言えます。今回の25%への関税引き上げは、9月に実施される見込みとされていますが、アメリカ側はこれを交渉材料として、中国側へ対話を迫る可能性が考えられます。中国側が何らかの譲歩をしてトランプ氏に花を持たせるならば、貿易戦争は瞬時に良い方に向かうかもしれません。事実、中国側にはエスカレートを抑制したいというシグナルが発せられているようです。

中国は国家として定めた産業(ハイテク産業)を2025年までに世界一にするという計画、中国製造2025(中国版インダストリー4.0)を遂行中です。国は個々の企業に関与することなく、公平公正なフィールドを提供することが資本主義のルールです。ところが「中国製造2025」は、国家主導で国の莫大なお金を使って設備投資するというものです。つまり、資本主義のルールを国家資金が蹂躙することになるわけです。実際、この10年の間に、技術を持つアメリカやドイツの民間企業を、国家の資金でどんどん買収を進めてきました。(中国国家が直接的に資金を出しているのではなく、共産党系の国有企業を介していますが。)民間企業と国家の資金力では、どちらが勝つかは明白であり、世界の先鋭な技術が中国の国有企業のものとなっています。これでは、資本主義とは相入れないどころか、資本主義が維持できなくなります。
米中貿易戦争は、トランプ氏の中間選挙に向けたポーズではないと繰り返してきました。また、アメリカの貿易赤字が減ればそれでよしというものでもなく、その本質は、「資本主義」対「社会主義」という国家運営を巡る正面衝突なのです。

事実、アメリカは中国資本が25%以上入った企業は、アメリカ企業を買収できなくしています。アメリカが貿易戦争を仕掛けた際、中国の要人はEUに飛んで「我々が手を組んでアメリカと戦いませんか。」と持ち掛けましたが、EU側は、「アメリカのやり方は横暴だが、根底の思考はアメリカと共有できている。」と、一蹴したと云われています。根幹にあるのは貿易戦争ではなく、民主・資本主義と国家・社会主義のイデオロギー戦争ですから、西側が中国と手を組むことができないのは当然です。

中国がアメリカから輸入する大豆に関して報復関税を掛けたことで、大豆が暴落してアメリカの農業関係者からトランプ氏への不満が噴出しました。EUは大豆を大量にアメリカから輸入することを約束しています。憶測の域を出ませんが、これはつまり、イデオロギーの戦いにおいては、アメリカとEUが共闘するという手打ちができているのかもしれません。
また面白いことに、中国はアメリカから輸入する大豆に関税を掛けたわけですが、他の国からの輸入で穴埋めができないため、関税を掛けても輸入せざるを得ません。そうなれば、困るのは中国の業者であり中国人民です。そこで、中国人民から不満が出ないようにするため、関税分を国家が業者に補填しているのです。つまり、貿易戦争としては、既に勝負が付いているわけです。
 
前項で解説したのは資本主義の制度設計を越えたという話ですが、一方で社会主義のマネーが、資本主義と混濁の中で支配権を強めているといった根の深い問題が、複層的に出始めているのです。貿易戦争は、お互いが血に塗れた上で強者の貿易赤字を縮小することで終結します。このイデオロギー戦争は、国家主導で民間企業に介入するのは止めなさいということですが、そうなると社会主義に矛盾が生じることになります。この問題が、どのように決着するかは全く想像もできませんが、未来の歴史教科書に載るであろう重大局面です。

『以下は、8月20日配信の有料メルマガから一部抜粋。
この週の日経平均株価は、前週の終値22,270円から22,601円へ』

8月に入ってから(つまり、前回の金融政策決定会合以降)の先週末までで、日銀が株買いに動いたのは、10日と13日の2回のみでした。先月までは、前場引けでTOPIXの下落率が0.2%を超えると、ほとんどの場合買い入れを実施してきましたが、今月に入ってからは下落率が0.2%を超えても様子見という日が何度もあります。
買い入れを行った10日前場のTOPIX下落率は、0.56%、13日が1.72%で、14、15日は下落率が0.4%を超えたにもかかわらず、日銀の買い入れは見送られています。このため、市場では日銀が株買いの縮小に動いているのでは、との観測が広がってきています。

日銀は7月30、31日の金融政策決定会合で「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」「ETFについては年間6兆円の目標は維持する一方で、市場の状況に応じて買い入れ額は上下に変動しうる」としましたが、当時のメルマガで「株買いの縮小」と「債券買いのステルステーパリング」であろうと解説しました。もっとも、日銀が政策の微調整に動いてからまだ1か月も経っておらず、これまでもTOPIXが前場で値幅を伴う下げをみせても、買い入れが見送られたケースがありましたので、現時点で「買い入れ縮小」と断定するのは尚早かもしれませんが、8月に入ってから買い入れのルールを変えたのは間違いないでしょう。

『以下は、8月27日配信の有料メルマガから一部抜粋。
この週の日経平均株価は、前週の終値22,601円から22,865円へ』

日本の財政破綻に備える意味で、実物資産や基盤的国策銘柄に加えて、米ドルを中心とする外貨に注目してきており、1ドル105円を超える円高が発生した際にはせっせとドルを買ってきた方も多いと思います。「アメリカ抜き」の世界が加速するならば、ドル買いはやはり躊躇せざるを得ません。

無論、そうはいってもアメリカは強大であり、今世紀後半も最強の先進国として世界経済の一角を占めるのは確実ですから、米ドルや米ドル建て資産が無価値になることは、まずないだろうと考えますが、保有資産の大半をアメリカにつぎ込むのは、日本に居住する私たちとしてはリスクがあるように思います。米ドルを減らすぶん、金、豪ドル、NZドルなど、下値が固いと思われる資産の比重を増やし、「その時」に備えたほうが賢明かもしれません。

世界が「アメリカ抜き」で動き始めたことで、日本もまた「アメリカ抜き」の世界を視野に入れて動きを加速させています。オーストラリア、インド、イギリスと準・同盟を結び、NATOに正式な代表部を常駐させるなど、今や自衛隊は日米同盟の枠を越えてグローバルな軍事同盟を構築していますが、ここまではアメリカの承認があってのことです。

安倍政権がさらにそこから進めているのは、過去のメルマガで連載した「インド太平洋戦略」という旗を掲げて、軍事、政治、そして経済のネットワークを日本主導で構築しようという試みです。かつては日本がこういうことをやり始めれば、必ずアメリカから牽制が入り、アメリカを拒否権付きで参加させない限り、必ず潰されてきたという経緯があります。たとえばアジア金融危機の反省として、日本主導でアジア共通通貨を作る構想を財務(当時は大蔵)官僚らが推進しましたが、アメリカの横槍で潰されてしまいました。共通通貨を作るという構想は大幅に後退し、アメリカが拒否権を発動すれば何もできないという、ただの通貨スワップ(チェンマイ構想)として、なんとか実現にこぎつけることがでたわけです。そして、そうしたことを考えた「罰」として、律令以来の名前を剥奪され、分割されるという、大蔵省にとっては過酷な結末が待っていました。日本の政治家や官僚が米国の了承を得ずに、アジアや世界の秩序を変更するような動きを、従来のアメリカは決して許さなかったのです。

しかし、トランプ政権になって激変しています。安倍政権は比較的、自由な発想に基づいて、あたかも「アメリカ抜き」の世界を模索するように、軍事・政治・経済面で秩序変更を志向しています。軍事面では先述の「準・同盟国」だけでなく、新たに「太平洋国家」としてのフランスを自衛隊のパートナーのうち一つとして、西太平洋に招き入れようとしています。また、ベトナム、フィリピン、インドネシアなど、中国の膨張に悩むASEAN諸国との連携をアメリカからの承認なしでどんどん進めています。南沙諸島では事実上の交戦事態も発生しており、交戦国の一方の当事者への軍事的援助はその相手国と戦争するリスクを高めますが、安倍政権は躊躇せず上記のASEAN諸国軍に戦闘艦などを供給する交渉を続けています。
これは、かつてのアメリカならば許したかどうか。また、安倍政権はアメリカの仮想敵国であるロシア軍と自衛隊の連携も進めるつもりです。無論、北方領土返還交渉の布石でもあり、ひとまず信頼関係を醸成するためと云えますが、日ロ両軍の人的な交流を進化させつつ、情報・治安分野で連携を進めることによって中国の膨張に共同対処する準備ともいえます。かつてのアメリカなら日本の総理がこれをやれば、一発で内閣が潰されましたが、今やこんな話が大手を振って進められている現実に隔世の感があります。

また、経済的な国際秩序の変更をアメリカの了承をほとんど得ないまま、日本主導で構築する動きというのも、トランプ政権だからこそできることと云えます。TPPからアメリカが抜けた直後に、アメリカ抜きの「TPP11」を発足させるといったことは、かつてなら絶対に不可能だったはずですが、アメリカは日本主導の経済圏となったTPP11に、取り立てて注文もつけていません。安倍政権はこれをチャンスをとらえて、TPP11にイギリスや韓国、台湾などを引き寄せ、欧州との巨大経済圏(日欧EPA)を発足させ、RCEPでアジア経済をまとめ上げようとするなど、「世界最大・最強の自由貿易経済圏」の創出を目指すところです。アメリカではなく日本が主導する巨大経済圏など、かつてのアメリカなら絶対に許さなかった筈です。さらに、安倍政権はかつてのアメリカが必ず警戒した、「中国との経済連携」も猛スピードで進めており、これまた「アメリカ抜き」で進んでいるのは、従来ならあり得なかったことです。