5月の「日経平均株価振り返り」と「主なニュース」

『以下は、5月7日配信の有料メルマガから一部抜粋。
この週の日経平均株価は、前週の終値22,472円から22,758円へ』

GWの直前、アジア通貨の為替が一斉に下落しました。1997年から数年にわたって続いたアジア通貨危機の際も、このような兆候が幾度となく確認されていました。ドル高=ドルの金利上昇によってドルがアメリカへと戻り、多額のドル建て債務を抱えるアジアの国々が支払いに窮したことは記憶に新しい話です。最近のアジア通貨の為替レートは、そのアジア通貨危機の頃に似てきています。

貿易赤字と財政赤字の双子の赤字を抱えるアメリカは、資本収支が黒字であるからこそ維持できていることは以前に解説しました。アメリカの要人がドル安を望む発言をして、その後に強いドルはアメリカの国益と言い直すケースはしばしば起きているのはその為です。基軸通貨であるアメリカのドルは世界中に流通していますが、これは影響力が大きいことの裏返しでもあります。ドルは世界各地で広く使われているので、それだけドルの信任は重要なわけです。

そのドルの影響力はとくに新興国で強いわけですが、アジア通貨危機のようなケースは、ドルが強すぎた場合に起こります。これまで金融緩和で湯水の如く供給されていたドルが、アメリカの景気回復でドルの金利が上昇し、一斉にアメリカ本国へと還流すると、アジア各国の通貨は暴落します。日本の株価は円安を好みますが、アジア各国の場合は、通貨安になると自国通貨を防衛するために大幅な利上げを迫られます。大幅に利上げしないと、通貨安・暴落が止まらないためです。
そして、アジア通貨危機のようなことが起きれば、結果的にアメリカの株価にも影響します。つまり、アメリカの景気サイクルがピークを通過した頃に、起きやすいということです。

『以下は、5月14日配信の有料メルマガから一部抜粋。
この週の日経平均株価は、前週の終値22,758円から22,930円へ』

先週のEPSは40円ほど目減りしたことをお伝えしました。PER14倍に近づきつつある日経平均ですが、景気後退期はEPSの目減りにともなって、適正なPER水準に収斂されていくものです。つまり、PERは適正な水準に到達したが、EPSが減少していたため株価は下がっていた。PERは上昇したけれど、あの時が景気のピークだったのだと後になって判るということです。

先週から、決算発表がピークを迎えており、多くの投資家は寝不足が続いていることと思います。2018年3月期(日本では第4Q、アメリカでは第1Q)の業績が良いことは、既に株価に織り込まれていました。先日、アメリカのキャタピラー(建機の企業)のCEOが、「今年はこの第1Qが最高で、これ以上は無い」と発言したことがきっかけで、世界経済がピークを迎えたとの観測が出てきました。増収増益は株価を押し上げるわけですが、肝心なのはその率です。増収率・増益率がプラスで続いていても、その率に陰りが見えると株価は下がるものです。
実際、日本企業の決算も2018年3月期は通期でみて好調でしたが、第4Qは失速している企業が多く見られます。

もう一つ気になることがあります。
投機筋のポジションは、「原油買い」「米国債売り」「ドルロング(買い)」で膨らんでいます。イランの核合意やイスラエルへの大使館移転によって、原油価格が上昇すると見込んだポジションと考えられます。すなわち、「原油高」→「インフレ」→「金利上昇(債券下落)」→ドル高というシナリオです。(先週のメルマガで、ドル高によってインドネシアをはじめ、アジア諸国や南米が返済に窮していると記しましたが、その原因として挙げられるのは、トランプ氏に因る中東の揺さぶりです。)

この投機筋の建玉が、一杯いっぱいまで膨らんでいます。このように投機筋が全力でポジションを組んだ時は、短期的にその方向へ動いた後、大きく逆方向へ振られることが多いものです。

『以下は、5月21日配信の有料メルマガから一部抜粋。
この週の日経平均株価は、前週の終値22,930円から22,450円へ』

日銀による年間6兆円もの株買いは、株式市場に大きなインパクトがあることは言うまでもありません。実際、昨年前半までは、先物を使った外国人の売り崩しが何度か見られましたが、日銀が売りを吸収する形で株価は踏み上げてきました。

日銀は「株式市場に影響がない」と断言していますが、売られることがなく買い一方の巨額の資金が、株式市場に影響しない筈がありません。金融政策によって、物価の安定を図ることが日銀の役割ですから、本来であれば日銀が株を買うことで、物価が緩やかに上昇するというロジックを説明する必要があります。株の買い支えと物価の関係については、説明されたことがありませんが、日銀が断言するとおり本当に株式市場に影響がないとすれば、なぜここまで強引に買い進める必要があるのかも説明できないはずです。まさに論理矛盾と言えるでしょう。

日経平均に最も影響が大きいファーストリテイリング(ユニクロ)株で、日銀に因る買いの影響を検証してみます。柳井一族などの保有分を除いた浮動株のうち、日銀が1年間で買った割合は9.7%に及びます。さらに日銀の保有比率は浮動株全体の69.6%にも達しています。浮動株は残り約3割ですから、仮にこのまま日銀が買い続けたとすれば、3年で浮動株は消えることになります。浮動株が少なくなると、少しの売り買いで大きく株価が動くことになりますから、市場に影響がない訳がありません。

また、日銀の株買い(アベノミクス発動以降)によって、ファーストリテイリング株は15,000円〜20,000円程度下駄を履いているはずです。仮に20,000円分が日銀の買いに因る上昇とすれば、日経平均はファーストリテイリングだけで1,000円ほど下駄を履いていることになります。

これまでは、前場で0.1%以上下げれば、午後に700数十億円もの買いを機械的に入れていたわけですが、最近は前場で0.2%下げても0.3%下げても買われることはありません。今月は0.4%以上、下げた時に買っています。これが今後の買い入れルールであるかどうかは不明ですが、0.1%下げれば買っていたものを0.4%以上の下げで買うようになっただけでも、大きなテーパリングと云えます。

今後、2月、3月のような大暴落があった場合、テーパリングしている分を含めて全力で買いに行くのか。ファーストリテイリングに見るように、これ以上買うと拙いということで、テーパリングの中で株価の下落を受け止めて行くのか、非常に興味深いところです。

『以下は、5月28日配信の有料メルマガから一部抜粋。
この週の日経平均株価は、前週の終値22,450円から22,171円へ』

先週、愛媛県が新しい文書を国会に提出したことで、与党優勢に傾きつつあった与野党間の駆け引きが、野党側にかなり有利なものとなりました。これをもって日経平均の上昇が止まったとおり、愛媛県の新文書は重大な意味を持ちます。これまで総理や官邸が否定してきた総理の関与が、明確かつ具体的に記されているからです。

また、財務省が国会に対して提出したのは、森友事件で改ざんされた決裁文書や、「ない」とされた一連の交渉記録の原本です。内容もかなり衝撃的であり、「価格交渉はしていない」との佐川氏の答弁が完全に嘘だったこと、籠池氏が主張してきた交渉の経緯が、真実だったということが明らかになりました。
愛媛県の新文書以上に官邸が慌てたのは、「総理夫人の関与」が明確に記されていることです。やはり総理夫人の関与があったわけで、交渉の当事者であった財務省がそれを記録していたのです。今回、財務省が提出した文書にも多くの黒塗りがあり、隠そうとすれば隠すこともできたはずですが、一番の肝である「総理夫人の関与」を残して国会に提出したのは、文書の内容以上に衝撃的なことといえます。

何れも総理が自身の進退を賭けた内容ですが、どちらも過去の答弁内容と真っ向から食い違う以上、総理が説明責任を回避するのは不可能でしょう。今後の国会運営次第では会期の延長も視野に入り、複数回の予算委開催、総理夫人の証人喚問や麻生財相の引責など、政権の致命傷となる事態もあり得るところです。
こうして安倍総理が突然政権を失う恐れが再浮上したため、日経平均の上昇が止まったのは当然といえば当然です。