浮き彫りになる外貨建て保険の問題点

本日の日経新聞が外貨建て保険に関する記事を掲載しています。

記事によると「利回りやリスクの説明が不十分」といった外貨建て保険に関するの苦情が増えており、生命保険協会の調査では、こうした苦情は2017年度に1,888件にのぼり5年前と比べて3倍に増えているとのことです。苦情原因の77%は「販売時の説明が不十分」というもので、具体的には「元本割れリスクについて適切な説明を受けていない」(43%)が最も多いとしています。

金融庁は2018年9月に公表した行政方針で、投資信託などと比べて運用コストや実質的な利回りが分りにくいことを指摘していました。保険商品をつくる生命保険会社と、外貨建て保険を販売する生命保険会社や銀行は、金融庁に問題を指摘されてから1年以上経って、ようやく見直しに動き始めました。昨年11月に金融庁幹部が大手生保を呼び出し「我々の問題意識がうまく伝わっていないのか」と見直しを強く迫ったことで、ようやく重い腰を上げた格好です。

背景には、マイナス金利政策があります。本来、保険の役割は保障を提供することにありますが、近年、高い保険料(掛け金)の契約を獲得するために、貯蓄性保険の販売が目立っていました。しかし、マイナス金利政策によって、生保各社は円建ての貯蓄性保険を次々に販売停止してきました。そのような中、生保各社や売り手にとって、為替変動を考慮しなければ高めの利回りをアピールできる外貨建て保険は、貴重な稼ぎ頭だったと云えます。生命保険会社と売り手の双方に顧客に説明する責任感が欠けていたところへ、外貨建て保険が収益源として浮上したことが、多くの苦情に至った原因だと思われます。

記事には更に興味深い話があり、これこそが問題の本質です。
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以下、記事より抜粋
『銀行は顧客対応に逃げ腰だった。2月初旬、金融庁の「怒り」を受けて契約済みの顧客に説明する体制をつくろうとしたが、その実施主体を売り手や銀行ではなく生保にする案も議論し始めた。これには生保側が「何のために高い販売手数料を払っているのか」と押し返して銀行が顧客の前面に立つことで決着したが、「販売ありき」の銀行の実態を浮き彫りにした。』抜粋ここまで

金融庁は、投資信託などと比べて運用コストや実質的な利回りが分かりにくいことを指摘していますが、分りやすく表示すれば、保険で貯蓄をすることの合理性の無さが露呈することになります。貯蓄や資産形成の手段として用いられる投資信託と比べ、保険販売で売り手が得る手数料は数倍から数十倍も高くなっており、そのため昨年は、保険の販売手数料が投資信託を上回る銀行が相次いでいます。

賢く生きていくためには、『売り手が得る手数料は、顧客が負担するコストであること』を理解しておかなくてはいけません。